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» 2015年04月24日 09時00分 UPDATE

和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(11):水素資源も含めた、多様なエネルギーサプライチェーンが不可欠 (3/4)

[和田憲一郎(エレクトリフィケーション コンサルティング),スマートジャパン]

なぜ今“水素社会”なのか

和田氏 基本的な質問をしたい。なぜ今、FCVや水素ステーションなのか。これについて、FCDICとしてはどのように考えているのか。

吉武氏 最初に燃料電池について述べたい。昔は燃料電池といえば、前述の通り宇宙用として開発が進められてきた。しかしカナダのベンチャー企業であるバラード社が、GE社の固体高分子形燃料電池の技術を導入して開発を進め、1980年代の後半に新規電解質膜、サーペンタイン流路型セパレータを採用した画期的に高い出力密度を発生させるスタックを発表した。これは燃料電池が電気自動車用電源として利用できる可能性を示したものだった。

 その後1990年代に入り、多くの自動車メーカーや電機メーカーがFCVの開発に着手した。使用する水素燃料の種類としては、直接形メタノール燃料電池、メタノール改質、ガソリン改質によるオンボード改質水素が検討された。さらに水素貯蔵タンクに利用する水素貯蔵合金の研究なども行われたが、現在はカーボンファイバー製の高圧水素タンクを用いる方法に収束している。

 ただしFCVの場合、車両に水素を充填する施設がなければ用をなさない。思い返してみれば分かるが、1908年にT型フォードが出た後のモータリゼーションおいては、クルマの販売とともにガソリンスタンドが次々と設立されることで大きな新しいビジネスが形成されていった。スタンダードオイルなどがその代表例であろう。

 日本でガソリンスタンド網が形成されたのは、既に米国でビジネスモデルが確立された後である。これと同様にFCVについても、ガソリンスタンドに相当する水素ステーション網を構築していくことが、FCVの新たなビジネスモデルを生み出すことにつながる。2011年1月には、自動車メーカーとエネルギー会社が集まり、2015年末までに100カ所の水素ステーションを設置するという共同声明を発表している(関連記事)。

ゼイタクの質が変化

和田氏 FCVの場合はCO2を排出しないが、水素をどうやって作るか、つまりWell-to-Tankに関しては多様な議論がある。現在のように化石燃料を用いて水素を作ると、結果的にCO2削減にならないとの意見があるが、FCDICとしてはどのように考えているか。

吉武氏 これはいろいろな考え方がある。確かに化石燃料を用いて水素を生成すれば、その過程にてCO2が排出される。しかしエネルギーを作り、溜めるということになると、電気の場合は溜めにくく、それを移動させることは容易ではない。一方水素は、液化水素にするなど運搬しやすい形に置き換えることも可能となる。つまり、電気エネルギーは運びにくく、化学エネルギーは運びやすいということだ。こうしたエネルギーに関する議論は、Well-to-Tankだけでなくこうした観点からも考えるべきであろう。

和田氏 上記に関連して、水素は再生可能エネルギーから生成すればCO2削減が可能になる。しかしその場合、副生水素などに比べて生成コストは上昇する。再生可能エネルギーから水素を作るケースについてはその将来像をどうみているか。

吉武氏 確かに再生可能エネルギーから水素を生成する場合、コストは高くなる。しかし、水素をつくり出す方法は1つだけではない。これだけエネルギー使用量が増え、複雑な社会になってくれば多様なエネルギーの生成方法を持つことは重要である。例えば、電力を使用するときに何を重要視するであろうか。安定していること、およびそのクオリティであろうか。再生可能エネルギーは必ずしも安定していないが、化学エネルギーに変換すれば溜めておくこともできる。

 これからの社会では、いろいろな方法でエネルギーを活用できるようにすることが重要になる。一部に高コストの生成プロセスがあっても、さまざまな製造プロセスを確保すればエネルギーサプライチェーンを充実させることができる。トータルで生成コストのバランスをとることが許されるというのが余裕のある社会の姿なのではないか。そして「余裕のある使い方」ができることが大切ではなかろうか。エネルギーに関する“ゼイタクの質”が変わってきているのかもしれない。

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