エアコンを使わないデータセンター、青森の雪でPUE1.2クラスの超省エネを実現省エネ機器

青い森クラウドベースは、青森県六ケ所村に建設するデータセンターの着工式を実施した。サーバルームの冷却に雪と外気を利用する点が特徴で、2015年11月に完成予定だという。

» 2015年04月27日 11時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 クラウドコンピューティングを支えるデータセンターだが、情報処理が集中した際に発生するサーバの熱量は非常に大きく、データセンターはこの「空調対策」とそれに伴い発生する「電力問題」を構造的に抱えている。この問題に対し、地の利を生かし「自然の力」で解決を試みた新しいデータセンターを建設するのが、青い森クラウドベースである。同社は、災害リスクが低く冷涼な自然の気候を備えている青森県において「寒冷地エクストリームデータセンター」を提唱。同地において、最新設備のデータセンターを建設することで、これらの課題に対応するデータセンターを展開していく方針を示す。

冬に保管した雪を真夏に活用

 新たに建設するデータセンターは、青森の自然を幅広く活用していることが特徴となる。青森県は年間の平均気温で東京よりも5度低く、この外気を生かすことで電力消費を抑えつつデータセンターを冷やすことが可能となる。最新の外気冷房システムを採用し、1年間の内約85%の期間の空調を、外気によって賄うという(図1)。

photo 図1:青い森クラウドベースのデータセンターの外観イメージ(クリックで拡大)※出典:青い森クラウドベース

 さらに気温が上がる真夏期については、冬の間に断熱保温しておいた雪山の融解水の冷熱による雪氷冷房システムを活用する。これにより圧縮機を使った消費電力の高いエアコンを一切使用しない超省エネ型のデータセンターを構築可能とした(図2)。

photo 図2:青い森クラウドベースの外気と雪氷活用型冷却システムの構造イメージ(クリックで拡大)※出典:青い森クラウドベース

 外気冷房と雪氷冷房の併用は、商用データセンターとしてはあまりない取り組みで、経済産業省の平成26年度(2014年度)「中小企業等省エネルギー型クラウド利用実証支援事業(省エネ型データセンター構築実証)・データセンターの地方分散化に資する省エネ性能向上の実証」事業に採択されているという。

最新式データセンター同等のPUE1.2を雪と外気で実現

 敷地面積は1万2000平方メートルで、鉄骨1階建の構造。サーバ棟は80ラックごとのモジュラー設計となっており、徐々に設備を増やしていけるようになっている。2015年11月の完成時期には、2棟80ラックまで完成予定としている。ラックハウジング仕様も定格6〜20kVA(キロボルトアンペア)の高密度対応となっているため、少ないスペースと費用で高度なコンピューティング処理を行える。データセンター仕様は日本データセンター協会(JDCC)基準のTier3以上に準拠しており、データセンターの電力仕様効率を示すPUE(Power Usage Effectiveness)は1.2未満を目指すとしている(図3)。

photo 図3:青い森クラウドベースが実現を目指すPUE1.2における、電力仕様用途の内訳(クリックで拡大)※出典:青い森クラウドベース

 PUEは、データセンター全体の消費電力を、その内のIT機器で使用する消費電力で割った数値で、理論上の最高値は1.0になる。従来のデータセンターでは2.0程度だとされている。最新式のデータセンターでは1.2を達成しているデータセンターも存在するが、商用データセンターで達成しているところはほとんどなく、実現すれば画期的なものになる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.