再生可能エネルギーと原子力が共存、半島に集まる巨大な発電所エネルギー列島2015年版(2)青森(2/2 ページ)

» 2015年04月28日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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風力とバイオマスの導入量は全国2位に

 陸上の風力発電も活発だ。下北半島の先端では「大間(おおま)風力発電所」の建設工事が始まっている。J-POWER(電源開発)のグループ会社が牧場の近くに9基の大型風車を設置して、2016年3月に運転を開始する予定である。全体の発電能力は19.5MWになる。

図5 下北半島における送電設備の増強(2014年6月時点)。出典:東北電力

 この計画と並行して、J-POWERは同じ大間町内で「大間原子力発電所」の建設も進めている。2008年に工事を開始して以降、現在までに原子炉の建屋を含む主要な施設が整い始めている。当初は2012年に運転を開始する予定だったが、今のところは未定の状態だ。

 半島の東側には東北電力の「東通(ひがしどおり)原子力発電所」があって、同じ敷地内では東京電力が原子力発電所を新設する途上にある。東通から再処理工場のある六ヶ所村、さらに青森市に向けて送電設備の増強も進んでいる(図5)。東通と大間のあいだはJ-POWERが送電線を敷設することになっている。

 下北半島を中心に、青森県では原子力と共存しながら再生可能エネルギーが発展する状況だ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模を見ると、太陽光の次に風力とバイオマスが増えてきた(図6)。風力とバイオマスは全国で2番目の発電規模に拡大している。

図6 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 バイオマス発電では内陸部の平川市で、地域の森林から出る間伐材を利用した発電所が2015年10月に運転を開始する予定だ。地元の名産品であるりんごの木を剪定(せんてい)した枝も活用する点に特色がある。廃棄物の処理を中心に環境リサイクル事業を展開するタケエイが地元に発電会社を設立して取り組む。地域の森林事業者から20年間にわたって未利用木材の供給を受けながら、燃料の木質チップを加工する事業も実施して発電までの一貫体制を構築していく(図7)。

図7 木質バイオマス発電の事業スキーム。出典:タケエイ

 ユニークな取り組みとしては、鴨のふんを使ったバイオマス発電プロジェクトもある。青森県内で介護施設を運営する会社が再生可能エネルギーと農業を展開する一環で、2015年4月に発電を開始した。鴨肉を生産・販売する青森市内の会社から鴨のふんを引き受けて、メタンガスを発生させてから発電に利用する(図8)。発電の際に生じる熱は温室ハウスに供給してパプリカの栽培にも役立てる。

図8 鴨ふんバイオマス発電の事業スキーム。出典:みちのく銀行

 こうして県内の資源を生かして再生可能エネルギーを拡大する動きが加速する一方で、国全体の原子力発電の中核を担う地域にもなる。本州の最北端にある青森県が日本のエネルギーの未来に向けて果たす役割は大きい。

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2016年版(2)青森:「風力発電の導入量が全国1位、日本最大のメガソーラーも動き出す」

2014年版(2)青森:「風力発電が半島から沖合へ、32基の大型風車を太平洋上に展開」

2013年版(2)青森:「風力発電で先頭を走り続ける、六ヶ所村に並ぶ大型の風車と蓄電池」

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