再生可能エネルギーと原子力が共存、半島に集まる巨大な発電所エネルギー列島2015年版(2)青森(1/2 ページ)

青森県の下北半島で国内最大級のメガソーラーの建設工事が進行中だ。近くの港では洋上風力発電所の建設プロジェクトが決まった。地域の森林資源や鴨のふんを利用したバイオマス発電も始まる。その一方では2カ所で原子力発電所を新設する計画があり、関連施設の増強が着々と進んでいる。

» 2015年04月28日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 下北半島と六ヶ所村の位置。出典:青森県エネルギー総合対策局

 斧(おの)のような形で本州の最北端に伸びる下北半島で、現在の日本の電力事業の縮図とも言える状況が繰り広げられている(図1)。大規模なメガソーラーや風力発電所が続々と運転を開始する周辺には、新しい原子力発電所や核燃料サイクル施設の建設工事が難航しながらも進み続けている。

 メガソーラーの中では「ユーラス六ヶ所(ろっかしょ)ソーラーパーク」が11月の運転開始に向けて工事の最終段階に入った。六ヶ所村の2カ所に分散する250万平方メートルの土地を利用して、合計で51万枚にのぼる太陽光パネルを設置する計画だ(図2)。豊田通商と東京電力が合弁で運営するユーラスエナジーグループのプロジェクトである。

図2 「ユーラス六ヶ所ソーラーパーク」の全景(2014年10月時点の状況)。千歳平北地区(上)と鷹架地区(下)の2カ所に分散。出典:清水建設

 発電能力は148MW(メガワット)に達して、国内で最大のメガソーラーになる。年間の発電量は1億4000万kWh(キロワット時)程度を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると3万8000世帯分に相当する規模で、六ヶ所村の総世帯数(4600世帯)をはるかに上回る。

 建設用地は「むつ小川原(おがわら)開発地区」の中にある。1970年代に国が主導して開発した工業団地だが、大半の土地が売れ残る結果になり、その後は原子力関連施設が相次いで建設されることになった(図3)。ただし中核になる核燃料の再処理工場は1993年に着工したものの、現在でも営業運転できる状態には至っていない。

図3 六ヶ所村の原子力関連施設。出典:青森県エネルギー総合対策局

 工業団地と合わせて港湾施設も整えたが、やはり当初の計画から大幅に縮小することになった。代わりに港湾の周辺海域では、大規模な洋上風力発電のプロジェクトが現実味を帯びてきた。陸地に近い1000万平方メートルの洋上を対象区域にして、地元の「むつ小川原港洋上風力開発」が発電事業を準備中だ(図4)。

図4 「むつ小川原港洋上風力発電事業」の立地可能区域(画像をクリックすると拡大)。出典:青森県県土整備部

 1基あたり2.5〜5MWの発電能力がある大型風車を30基ほど建設する計画で、最大で80MWの規模を想定している。洋上風力の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は30%程度になることから、年間の発電量は2億kWhに達して、ユーラス六ヶ所ソーラーパークを大幅に上回る見通しだ。2016年内に着工、2018年に運転を開始できる予定である。総投資額は300億円にのぼる。

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