電力と熱を同時に得られるガスコージェネ、東京ガスらが総合効率71%の新システム蓄電・発電機器

ガスを燃料に電力と熱(冷熱)を同時に得るガスコージェネレーションシステムは、その発電効率の高さから注目を集めている。東京ガスは三菱重工業ら3社と共同で、蒸気回収率を高めた総合効率71%の新システムを開発した。

» 2015年06月01日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 東京ガスは三菱重工業、三浦工業、神戸製鋼所のメーカー3社と共同で、ガスエンジンの廃温水を蒸気として高効率に回収するコージェネレーションシステム(以下、ガスコージェネ)を開発した(図1)。三菱重工業と東京ガスグループが2015年7月から販売を開始する。

図1 東京ガスらが開発したガスコージェネレーションシステムの概要 出典:東京ガス

 ガスコージェネはガスエンジンで発電機を駆動して発電し、同時にガスエンジンの排気ガスや冷却水が持つ廃熱を蒸気や温水として利用するシステム。オフィスビル、ホテル、工場などで導入されている。中でも中・大規模のガスコージェネの導入が多い工場では、蒸気を加熱や殺菌などの生産工程で幅広く利用しているものの、温水は利用先が限定されており、全てを使いきれず廃熱の利用率が下がるケースも見られる。

図2 三菱重工業製の高温化仕様ガスエンジン「18KU30GSI」出典:東京ガス

 今回開発された新システムは、既にメーカー3社がそれぞれ市場投入している製品を組み合わせることで、ガスエンジンの廃熱を温水から蒸気に効率良く変換し利用することを可能にした。ガスエンジンには、東京ガスとの共同開発により一部仕様を変更した三菱重工業製の出力5750kW(キロワット)の高温化仕様ガスエンジン「18KU30GSI」(図2)を採用。廃熱をより多くの蒸気に変換し利用するため、冷却水の温度設定を通常の90℃程度から120℃に変更している。この設定変更に伴い、部品の一部や付帯機器の構造・構成を高温化仕様に改良している。

 廃温水熱を利用する蒸気発生装置「VS-400M」(図3)は三浦工業と東京ガスが共同開発したもの。工場の生産工程などで排出される使用しきれない廃温水を効率よく蒸気に変換する装置だ。新システムではガスエンジンおよび利用する蒸気の負荷変動に追従できるよう、負荷に応じて稼働する比例制御や、複数台の装置を効率的に制御する台数制御などの機能を実装している。

 神戸製鋼所製のスクリュー式小型蒸気圧縮機「スチームスターMSRC160L」(図4)は、従来、再利用が困難なため廃棄されることが多かった低圧蒸気を、0.8メガパスカル(MPa)程度の利用可能な蒸気圧にまで昇圧する役割を担う。神戸製鋼所と東京ガスで共同開発を行い、プログラム変更や多様な水質にも対応できる仕様に改良している。

図3 三浦工業と東京ガスが共同開発した蒸気発生装置「VS-400M」/図4 神戸製作所製のスクリュー式小型蒸気圧縮機「スチームスターMSRC160L」出典:東京ガス

 こうした改善の結果、排ガスボイラーだけから蒸気を回収する場合と比べ蒸気回収効率が18.4%から28.4%に向上し、電力と蒸気を合わせた総合効率で約71%を達成。さらに蒸気の使用量が減る期間には通常のガスコージェネ単体の稼働に切り替えることを可能にするなど、ユーザーの使用状況に応じ設定を変更できるよう利便性にも配慮している。

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