太陽光発電が急増する九州で、出力制御の実証事業を開始電力供給サービス

地域の電力需要に対する再生可能エネルギーの導入割合が最も大きい九州で、太陽光発電設備の出力を自動的に制御するシステムの実証事業が2015年内に始まる。九州電力が80カ所の発電設備を対象に12月から2月まで実施する予定だ。出力制御に対応できるパワコンのメーカーも募集する。

» 2015年06月10日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 2015年1月に固定価格買取制度の運用ルールが変わり、太陽光発電と風力発電に対する出力制御の範囲が広がった。地域の供給量が需要を上回ることが想定される場合に、電力会社は発電設備の出力を制御することができる。特に太陽光発電の導入量が急増している九州では、住宅用を含めて広範囲に出力制御を実施する可能性がある(図1)。

図1 固定価格買取制度による太陽光・風力の設備認定量(2015年1月末)。出典:九州電力

 ところが出力制御を効率的に運用するためのシステムを電力会社は持っていない。政府は2014年度の補正予算で「次世代双方向通信出力制御緊急実証事業」を実施することを決めて、東京・北陸・関西・九州の4電力会社に補助金の交付を決めた。このうち最も必要性が大きい九州電力がいち早く実証事業の概要を決めて、6月8日に協力事業者の募集を開始した。

 実証事業で開発するシステムは2つある。1つは電力会社が地域の需要と発電量を予測しながら遠隔にある発電設備の出力制御を実施するシステムだ。合わせて電力会社からの指令を受けて出力を制御できるパワーコンディショナー(PCS)も必要になるため、PCSメーカーにも実証事業の参画を募る(図2)。

図2 実証事業で開発・運用する出力制御システムの構成(画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 もう1つは小規模な発電設備を対象に出力制御を代行する「配信事業者(アグリゲータ)」向けのシステムである。電力会社が出力制御のスケジュールを作成すると、それをもとに配信事業者が対象になる発電設備の出力制御をインターネット経由で設定できるようにする。九州電力は12月末までに2つのシステムを開発して実証運用に入る予定だ。2016年2月末までの約2カ月間で出力制御の効果を検証する。

 実証事業の対象になる太陽光発電設備は80件程度を想定している(図3)。大規模な20MW(メガワット)級のメガソーラーを2カ所のほか、50kW(キロワット)以上の高圧と50kW未満の低圧から40件ずつ募集する。全体の設備容量(発電能力)を合計すると70MW程度になる。

図3 実証事業の対象になる太陽光発電設備の募集件数。出典:九州電力

 九州本土の太陽光発電設備のうち、2015年3月末の時点で約34万件が送配電ネットワークに接続済みだ(図4)。設備容量は466万kW(=4660MW)に達している。実証事業では設備容量で換算して全体の1.5%程度を対象に出力制御の実効性を検証することになる。

図4 九州本土の太陽光発電設備の接続状況(2015年3月末)。出典:九州電力

 九州電力は検証結果をもとに、2016年度には実証規模を拡大して出力制御システムの高度化に取り組む方針だ。現実に出力制御が必要になる可能性が最も大きい時期は5月のゴールデンウイークで、早ければ2016年度に実施することも想定される。それだけ実証事業の成果に注目が集まる。

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