燃料電池車の国際標準化が進む、世界50カ国で輸出入を促進へ法制度・規制

日本政府が推進している燃料電池車の国際標準化が新たな一歩を踏み出した。中核装置の高圧水素容器を含む技術基準が「国連規則」として6月15日に発効したことで、今後は燃料電池車の輸出入時に国際間の相互認証が可能になる。国連規則にはヨーロッパを中心に世界50カ国が加盟している。

» 2015年06月16日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 次世代のエコカーとして期待が高まる燃料電池車だが、大きな課題の1つが安全基準の統一だ。国際的に普及するには世界で統一の安全基準が不可欠で、2007年から「世界技術規則(gtr:global technical regulation)」の策定が始まっている。2013年6月にgtrの第1弾として「フェーズ1」が採択されて、燃料電池車の中核装置である高圧水素容器などの技術基準が初めて決まった(図1)。

図1 燃料電池車の安全性に関する「世界技術規則(フェーズ1)」の概要。出典:国土交通省

 この「gtrフェーズ1」をベースに、世界50カ国が加盟する「国連規則」が策定されて、2015年6月15日付で発効した。国連規則になると、加盟国が法令に取り込むことによって、国際間の相互認証が可能になる(図2)。さらに次のステップとして、車両全体で相互認証を可能にする「国際的な車両認定制度(IWVTA:International Whole Vehicle Type Approval)」が2016年3月を目標に実現する見通しだ。

図2 燃料電池車の国際標準化のプロセス。出典:経済産業省

 国連規則の段階でも、日本の関連法規に従って製造した燃料電池車の車両本体や水素容器などが海外でも販売できるようになる。国内では燃料電池車に搭載する圧縮水素容器が「高圧ガス保安法」の対象になるほか、燃料電池やモーターは「道路運送車両法」の対象に含まれる(図3)。高圧ガス保安法には2016年の春に国連規則を取り込む予定になっている。

図3 燃料電池車に対する国内の保安基準・規則。出典:経済産業省

 国連規則で最も重視しているのは水素容器の安全基準である。最高充填圧力(MFP:Maximum Fuelling Pressure)を87.5MPa(メガパスカル)に規定するほか、容器の使用年数を15年に制限する。国際規則に適合した水素容器には「Eマーク」を表示することが認められる。

図4 「MIRAI」の高圧水素タンク。出典:宇部興産(外装材をトヨタ自動車と共同開発)

 すでに国内ではトヨタ自動車がgtrに準拠した水素容器の製造者として、高圧ガス保安法に基づいて認定を受けている。トヨタの燃料電池車「MIRAI」に搭載している水素容器は最高充填圧力が70MPaでgtrに適合済みだ(図4)。高圧ガス保安法に国連規則が取り込まれた時点で、トヨタの水素容器はEマークを付けることが可能になる。

 国連規則には世界の50カ国・地域が加盟している。ヨーロッパからはロシアを含めて主要国がそろって加盟しているが、世界の中で市場規模が大きい米国と中国は加盟していない。一方でgtrには米国と中国も加盟していて、今後は両国が国連規則に加盟することが燃料電池車の普及に大きな課題になる。

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