東京大学の研究グループは、電池の充電速度の高速化に関係するといわれていた、電気をためる物質の“中間状態”を人工的に作り出すことに成功。充電速度を早くするためには、充電時に中間状態を発現させることが重要な方向性であることを明らかにした。
電気を蓄え必要に応じて取り出すことのできる二次電池は、スマートフォンや電気自動車など身の周りの生活用品から、再生可能エネルギーの出力変動への応用など、あらゆる場面に用途が広がっている。現在の主流はリチウムイオン電池だ。しかしどんな用途であれ、電池の充電が現在より速やかに行えるようになれば利便性の向上が見込める。東京大学の研究グループは2015年6月16日、高速充電が可能な二次電池の開発につながる研究成果を発表した。
これまでの研究では、電気を蓄える物質には充電状態でも放電状態でもない“中間状態”が存在し、これが充電反応中に現れることで充電を素早く行うことができるという学説が複数発表されてきた。しかしその内容は中間状態が本当に存在するのか、存在したとしてもどのような場合に現れるのかという議論にとどまっており、中間状態の具体的な性質については明らかにされていなかった。
今回、東京大学工学系研究科の山田淳夫教授と西村真一特任研究員らの研究グループは、電気を蓄える物質の元素の構成比や熱処理の条件を最適化することで、室温で長時間安定的に存在する中間状態が人工的に得られることを発見した。
さらに同研究グループはこの成果を活用して、これまで詳細が不明だった中間状態の分析も進めた。その結果として中間状態においては電子の並びが縞状に規則正しく模様を描き、これを邪魔しないようイオンが自発的にその位置を柔軟に変えているということを明らかにした(図1)。さらにこうした状況下では通常観測される充電状態や放電状態よりも電気抵抗が約100分の1程度となり、電子やイオンが高速に移動できるということも判明したという。つまり中間状態では高速充電が可能になるということだ。
こうした研究成果により、充電速度を速くするためには充電時に中間状態を発現させることが重要な方向性になるという指標が得られたことになる。今後はこの指標をもとに、中間状態の現れやすい二次電池材料の開発や充電条件を明らかにすることで、電池の充電時間を格段に短縮可能にすることが期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.