太陽光発電による史上最長のフライトに成功した「ソーラーインパルス2」に問題が発生していた。電力を充電・放電する蓄電池が過酷な使用環境のもと、温度の急上昇によって部品の一部が損傷した。修理には数カ月かかる見通しで、世界一周の飛行計画を再開できるのは2016年の4月になる。
太陽光の電力だけで世界一周を目指す「ソーラーインパルス(Solar Impulse 2)」は6月29日に日本の名古屋空港を飛び立ち、5日間かけて米国ハワイ州のホノルル空港まで無事に到着した(図1)。その後の点検・整備を終えてから、米国の西海岸に向けて飛行する予定だったが、最も重要な機器の蓄電池が正常に使えなくなっていた。
蓄電池が飛行中にオーバーヒート(過熱)の状態になっていたことが原因だ。名古屋空港を離陸した初日に、高度を2万8000フィート(8400メートル)まで上げる過程で蓄電池の温度が急速に上昇したが、冷却する手段がなかった。その後も5日間にわたって高度の上げ下げを繰り返したことで、蓄電池の一部が損傷してしまった(図2)。
ソーラーインパルスのエンジニアリングチームによると、蓄電池の技術的な問題ではなく、使用環境の評価方法に誤りがあった。太平洋上の熱帯の気候の中で蓄電池の温度が上昇する状況を事前に予測することができず、冷却の機能も不十分だった。
チームは蓄電池の修復を進める一方、蓄電池の温度を安定させるための冷却・加熱の方法を検討する。蓄電池の修復には数カ月の期間を要する見込みで、2016年に入ってからホノルル空港の周辺で試験飛行を実施して状態を確認する方針だ(図3)。
現在のところハワイから次の飛行地である南西部のアリゾナ州フェニックスに向けて離陸できる時期は4月初めを予定している。その後に米国の中部と東海岸、ヨーロッパを経由して、2016年内に出発地のアブダビへ到着する計画だ。すでに全体の飛行距離の半分近くをクリアしていて、世界一周を目指すプロジェクトの目標に変更はない。
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