石狩市で500mの「超電導」直流送電に成功、世界最長級の事例に電力供給サービス

電気抵抗が少なく、電力の損失を抑えた送電を可能にする「超電導送電」の実証が進んでいる。石狩超電導・直流送電システム技術研究組合は、500メートルの超電導直流送電に成功したと発表。これは超電導直流送電では世界最長級の送電距離になるという。

» 2015年08月10日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 石狩超電導・直流送電システム技術研究組合は2015年8月6日、北海道石狩市の石狩湾新港地域に設置した「高温超電導直流送電システム」で、500メートルの超電導送電試験に成功したと発表した。超電導直流送電では世界最長級の送電距離になるという。2015年9月にはデータセンターへの直流送電を行う予定だ。

 石狩超電導・直流送電システム技術研究組合は、超電導直流送電およびその関連技術にする試験研究を共同で行うため、千代田化工建設、住友電気工業、中部大学、さくらインターネットにより2014年1月に設立された非営利共益法人。経済産業省からの委託事業である「高温超電導技術を用いた高効率送電システムの実証事業」の基、石狩市で高温超電導ケーブルを用いた直流送電の実用化に向けた実証研究に取り組んでいる。

 今回の送電試験では国内で初めて超電動ケーブルを公道の下に埋設しており、新たな配管構造の採用して送電路の熱損失を従来の約半分、液体窒素循環の損失を従来の約4分の1に削減。一般家庭約3万世帯分に相当する1.5kA(キロアンペア)、100MVA(メガボルトアンペア)の送電能力を確認したという。

 同組合は今回の成果を受け、2015年9月から新たな実証に取り組む。さくらインターネットの「石狩データセンター」に、太陽光発電設備による電力を高温超電導ケーブルで交流変換せずに送信して活用する予定だ(図1)。

図1 実証試験のイメージ 出典:石狩超電導・直流送電システム技術研究組合

 超電導送電は、極低温にすると電気抵抗がゼロとなる超電導体を用いて行う送電で、送電ロスの低減や送電容量の増大ができる。近年、絶対ゼロ度付近の極低温ではなく、液体窒素温度(−196℃)の比較的高温で超電導となる材料の開発が進み、実用化に向けた研究開発が世界的に進められている。

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