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» 2015年09月04日 07時00分 公開

超電導による“世界初”の物理蓄電システムが山梨県で稼働、電力安定化の切り札へ蓄電・発電機器(3/4 ページ)

[三島一孝,スマートジャパン]

「超電導」が実現した「世界初」

 今回のプロジェクトは、5団体が役割分担を行い開発したものだ。まず中心となる超電導磁気軸受を古河電工と鉄道総合研究所が、発電電動機を鉄道総合技術研究所が開発。また、回転させるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製フライホイールをクボテック、フライホイールを回転させる真空容器をミラプロが開発した。山梨県では、このシステムとメガソーラーを連系しメガソーラーの出力や電力系統の情報を基に円滑な系統供給を行うという役割を担う(図3)。

photo 図3 次世代フライホイール蓄電システムの開発分担と実証機のイメージ図 出典:NEDO

 ポイントは、超電導技術の活用とシリンダの真空化により、物理的なエネルギー損失を抑えている点だ。先述した通りフライホイール蓄電システムのポイントは、電気を物理的な運動エネルギーに変換することにある。変換したエネルギーを無駄なく運動エネルギーとして保持するためには、物理的な摩擦などによる抵抗を減らし、損失を低減する必要がある。そのため摩擦のポイントである軸受け部分に超電導技術を採用し、非接触で回転させる構造とした(図4)。

photo 図4 稼働した次世代フライホイール蓄電システムの軸受部の様子。モニターで監視を行う(クリックで拡大)

 超電導とは、金属や金属酸化物などを低温にしたときに電気抵抗がゼロになる現象のことである。従来は極低温を実現する液化ヘリウム(−269度)でなければ実現できなかったが、液化ヘリウムは高価で量産化が難しい。そこで、液化ヘリウムよりも高温で超電導を実現できる技術を開発。またフライホイール側に超電導磁石を設置しなくても浮遊を実現できる独自の超電導バルク体を開発し、非接触で4トンに及ぶフライホイールを6000RPM(回毎分)で回転させることを実現した(関連記事)(図5)。

photophotophoto 図5 (左)はイットリウム系高温超電導コイル、(中央)は熱伝導のみで超電導を実現できる超電導軸受け、(右)は高速回転に対応する高剛性・断熱シャフト(クリックで拡大)

物理的なエネルギーロスを限りなくゼロに

 フライホイールを真空のシリンダに収めることで、空気抵抗によるエネルギーロス、熱の発生などを抑えることができるようになり、限りなくエネルギーロスをゼロに近づけることに成功した。フライホイール蓄電システムの蓄電容量は、フライホイールの直径の大きさ(2乗)、重さ、回転数に比例するが、大型化を実現しながら高速回転に耐えるには、硬さとしなやかさなどが必要になる。今回クボテックはCFRPをフライホイール素材として採用することで、直径2メートルの大型フライホイールの製作に成功した。

photo プロジェクトリーダーを務める鉄道総合技術研究所 浮上式鉄道技術研究部 部長の長嶋賢氏

 プロジェクトリーダーを務める鉄道総合技術研究所 浮上式鉄道技術研究部 部長の長嶋賢氏は「実現で難しかったのが、超電導を実現する低温状態を回転体でも問題なく発生できるかどうかという点だった。超電導や真空化によりエネルギーロスを低減すると同時に物理的な劣化が抑えられるため、従来型のフライホイール蓄電システムよりもメンテナンスコストを削減できるという利点がある。実証実験では実際にコスト低減が可能かどうかなどについても見ていきたい」と述べている。

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