超電導による“世界初”の物理蓄電システムが山梨県で稼働、電力安定化の切り札へ蓄電・発電機器(1/4 ページ)

山梨県や鉄道総合研究所らは、超電導技術を駆使し、再生可能エネルギーの発電変動を吸収できる「次世代フライホイール蓄電システム」を開発。現在稼働している1MWソーラーと連結し電力系統接続による実証を開始した。超電導を使ったフライホイール蓄電システムを実際に電力系統に接続して実証するのは「世界初」(山梨県)だという。

» 2015年09月04日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 今回実証稼働を開始した「次世代フライホイール蓄電システム」は、山梨県と鉄道総合研究所、クボテック、古河電気工業(以下、古河電工)、ミラプロが参加した、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」プロジェクトで開発したものだ(関連記事)。

 山梨県米倉山で建設が進められていた実証施設が完成(図1)し、同県が運営する米倉山大規模太陽光発電所と電力系統に連系させて、変動の大きい再生可能エネルギーの安定導入に向けた実証試験を行う。

photo 図1 完成した次世代フライホイール蓄電システム。軸受けには超電導技術が活用されている(クリックで拡大)

化学変化でなく物理的に蓄電する仕組み

 フライホイール蓄電システムは、電力を使って円盤型のフライホイールを回転させることにより、電気エネルギーを運動エネルギーに変換して貯蔵(充電)する仕組みだ。回転軸には発電電動機が付いていて、逆に電力を利用したい時には、回転している運動エネルギーによって発電し、電力に変換(放電)することができる。

 蓄電する手段としては、リチウムイオン電池などに代表される二次電池が注目を集めているが、二次電池は化学反応を活用した蓄電方式であるため、充放電サイクルを繰り返すと劣化し、十分に充電や放電ができなくなる。また短い時間で充電や放電を行うような応答性能なども限界がある。一方で、フライホイール蓄電システムは、電力をモーターを通じて物理的な運動エネルギーに変換しているだけなので、回転機構によるエネルギーロスや機構の物理的な劣化を抑えることができれば、充放電サイクルについては、特に理論的な限界がない。また、応答性についても反応を待つ二次電池に比べて、短い時間で大きな力を出すことができる。

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