電力と通信のセット販売も、電力小売完全自由化に向け新料金プラン続々電力供給サービス

2016年4月の電力小売り完全自由化を控え、既存電力会社および新電力が新料金プランを打ち出す動きが出始めている。通信とのセット販売など、従来にはないさまざまな枠組みが登場してきている。

» 2015年09月23日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 2016年4月の電力小売完全自由化に向け、家庭向けに電力を販売する「小売電気事業者」が2015年8月3日に開始されるなど、動きが本格化してきている。

 従来の電力会社は、発電・送配電・小売の全てを一体で運営し、また地域ごとのすみ分けを行ってきていたため、事実上「販売のための競争」が発生しない状況だった。そのため「料金プラン」なども、標準的なものを用意しておけば問題なかった。しかし、家庭向けまでを含めた電力小売完全自由化が実現すると、越境して電力販売を行うケースや、本来電力関係事業者でない事業者が参入することになり「販売のための競争」はかつてない激しさになることが予測される。

 競争に勝ち残るカギになるのが、電力の料金プランである。参入各社が自社の強みを見据え、どのような付加価値を考え、料金プランをどのように設定して、競争環境での差別化を図るのか、という点は、今後の電力小売事業にとって大きなポイントになる。そのため、小売電気事業者は、新たな料金プランの検討に入っている(図1)。

photo 図1 スイッチング支援システムによる契約変更の概要 出典:電力広域的運営推進機関

電力料金メニュー変更の方向性を発表した九州電力

 九州電力では、利用者のライフスタイルに合わせて選ぶことができる新しい電力料金メニューを検討を進めているが、その一部の方向性について2015年9月15日に発表した。その中で、現行の季時別電灯など時間帯別に料金を設定している一部の料金メニューについて、利用者のニーズなどを反映して、よりキメ細かに時間帯区分(季節・昼夜・平休日等)を設けた新しい料金メニューにリニューアルすることを決定した(関連記事)。

 最終的な新料金メニューの全体像・料金などについては、2016年1月頃に発表するとしているが、「休日昼間」は「平日昼間」に比べて安い料金とすることや、「夜間時間」は利用者のライフスタイルに合わせて「21時〜翌7時」「22時〜翌8時」「23時〜翌9時」の3パターンで選べるようにする点などを明らかにしている(図2)。

photo 図2 新しい料金メニューのイメージ 出典:九州電力

電力と通信料金をセットで販売

 太陽光発電システムの設計、施工、販売事業や新電力事業などに取り組むアップルツリーは2015年9月18日から高圧需要家向けに電力と通信をパッケージにした料金プランを開始する。同社は2010年創業のエネルギーベンチャーで2015年9月1日から法人向け新電力事業を開始している。

 新たな料金プランは、アップルツリーが提供する新電力と、同社が販売代理店として提供する邦人限定の携帯電話料金プランにセットで加入することで、電力料金の料金プランから最大で3%の割引を行うというものだ。組み合わせて契約することでコストメリットがある点を訴求する。

今後はポイントやセット割引がさらに多彩に

 参入各社の料金プランが明らかになりプロモーション活動が本格化するのは2016年初ごろからだと見られているが、今後は他の商材とのセット販売などは加速することが予測される。また既に東京電力とカルチュア・コンビニエンス・クラブの提携による「Tポイント」の展開(関連記事)や、丸紅と組んで新電力市場に参入する楽天の「楽天スーパーポイント」(関連記事)など、ポイントサービスの活用なども本格化してくると見られている。

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