電力の自給率が500%を超える町に、日本最大の風力発電プロジェクト自然エネルギー(1/2 ページ)

岩手県の葛巻町は1999年から再生可能エネルギーの導入を推進して、すでに風力発電だけで全世帯の5倍以上に相当する電力を供給できる状態にある。新たに60基の大型風車を設置する大規模な開発計画が動き出した。環境省は騒音のほか、希少猛禽類に対する影響を回避するよう求めている。

» 2015年09月25日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 葛巻町の位置。出典:葛巻町役場

 葛巻町(くずまきまち)は岩手県北部の高原地帯にあって、酪農と林業が盛んなところだ(図1)。16年前の1999年に「新エネルギーの町・葛巻」を宣言して、再生可能エネルギーの導入にも積極的に取り組んでいる。町のキャッチフレーズは「ミルクとワインとクリーンエネルギーのまち」である。

 町の中央を縦断する山岳地域は風況に恵まれていて、年間の平均風速は7.5メートル/秒を超える風力発電の適地が広がっている(図2)。この一帯の1900万平方メートルに及ぶ区域を対象に、三菱商事が60基の大型風車を設置する「葛巻ウィンドファームプロジェクト」を計画中だ。1基あたり2.3MW(メガワット)の発電能力を想定していて、合計で138MWに達する。国内で最大の「新出雲ウインドファーム」の78MWを大きく上回る。

図2 岩手県の風況。赤色の線(スマートジャパンが追記)で囲んだ部分が葛巻町。年間平均風速の単位はメートル/秒。出典:岩手県環境生活部

 三菱商事は環境影響評価の最初の手続きにあたる「計画段階環境配慮書」を7月中旬から公表してプロジェクトを開始した。配慮書の内容に対して9月18日には環境大臣が経済産業大臣に意見を提出して、その中で国内希少野生動植物種に指定されているイヌワシなどの影響に強い懸念を表明している。

 岩手県内では広い地域で希少猛禽類のイヌワシとクマタカが生息している(図3)。葛巻町でも全域がイヌワシの生息区域に入るほか、クマタカが生息する範囲も広い。こうした希少猛禽類の鳥が風車に衝突することを避けるために、環境省は発電設備の視認性を高める措置などを検討するように要求した。もし重大な影響が避けられない場合には計画の中止も含めて見直しを求める厳しい内容だ。

図3 希少猛禽類の生息状況(10キロメートル単位)。黄色の線(スマートジャパンが追記)で囲んだ部分が葛巻町。出典:岩手県環境生活部
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