湖畔の温泉で地熱発電を開始、発電後の温泉水は保養施設や農園へ自然エネルギー(1/2 ページ)

地熱資源が豊富な鳥取県の日本海沿岸部で、温泉水を利用した発電事業が始まった。100度以下の地熱でも発電できるバイナリー方式の装置を導入して、最大20kWの電力を作ることができる。さらに発電後の温泉水を近隣の保養施設や農園に供給して地熱を無駄なく利用する予定だ。

» 2015年10月28日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 地熱発電を開始した場所は、鳥取県の湯梨浜町(ゆりはまちょう)にある東郷温泉だ(図1)。鳥取県の日本海側は温泉に適した地域が広がっているが、その中でも東郷温泉は源泉の温度が高く、しかも湯量が多いことで知られている。地熱発電に最適な条件がそろっていることから、町が事業者を公募して中国・四国で初めての地熱発電に取り組んでいる。

図1 湯梨浜町の位置。出典:湯梨浜町役場

 東郷温泉の源泉から湧き出る温泉水は90度くらいの温度がある。100度以下の温泉水を利用できるバイナリー方式の発電装置を温泉街の一角に設置して、10月5日に発電を開始した(図2)。温泉発電に多く使われているIHI製の小型バイナリー発電装置で、発電能力は20kW(キロワット)である。

図2 「湯梨浜地熱発電所」のバイナリー発電装置。出典:協和地建コンサルタント

 1日24時間の連続運転で年間に350日の稼働を予定している。1日に利用する温泉水は330トン(毎分230リットル)である。発電量は季節によって変動して、平均すると1時間あたり10kWh(キロワット時)程度になる。年間では8万4000kWhを見込んでいる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して23世帯分に相当する。

 東郷温泉の地熱発電所は中国・四国で固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始した初めてのケースになった。発電した電力は1kWhあたり40円(税抜き)の買取価格で15年間にわたって売電することができる。公募で選ばれた島根県の協和地建コンサルタントが発電事業を運営する。

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