水力とバイオマスで電力の27%を供給、地熱発電も始まるエネルギー列島2015年版(31)鳥取(3/3 ページ)

» 2015年11月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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太陽光・バイオマス・地熱も有望

 鳥取県と島根県を拠点に建築材料の合板を製造する日新グループが、県境の境港市(さかいみなとし)にある工業団地の中に木質バイオマス発電所を建設した。自社工場で発生する端材と地域の森林から出る間伐材をチップにして燃料に利用する(図7)。

図7 「日新バイオマス発電所」の全景(上)、木質バイオマス発電の流れ(下)。出典:日新グループ

 発電能力は5700kWで、2015年3月に運転を開始した。年間の発電量は4500万kWhを見込んでいる。一般家庭で1万2500世帯分に相当する。境港市の総世帯数(1万5000世帯)の8割以上が使用する電力量に匹敵する規模になる。燃料の木質チップは年間に8万トンを消費する計画だ。

 その一方で地熱の利用も進んできた。鳥取県では日本海側の沿岸部と内陸の山間部の両方に温泉が湧き出る。このうち沿岸部にある湯梨浜町(ゆりはまちょう)の東郷温泉で2015年10月に地熱発電所が運転を開始した(図8)。固定価格買取制度を利用した地熱発電所は中国・四国を合わせた9県の中でも初めてのケースである。

図8 「湯梨浜地熱発電所」の所在地と全景(上)、温泉水の供給ルート(下)。出典:湯梨浜町役場、協和地建コンサルタント、経済産業省

 発電設備には100度以下の温泉水でも利用できるバイナリー発電方式を採用した。発電能力は20kWで、年間に8万4000kWhの電力を供給することができる。一般家庭の使用量に換算すると23世帯分と少ないが、発電した後の温泉水は保養施設などに供給して無駄なく使う予定だ。

 再生可能エネルギーにシフトする計画が進む鳥取県では太陽光発電も目ざましく伸びている。民間企業が建設したメガソーラーでは、2014年に運転を開始した「ソフトバンク鳥取米子ソーラーパーク」の発電能力が43MW(メガワット)に達して中国地方で最大の規模を誇る。同じ米子市には京セラグループが29MWのメガソーラーを建設中で、2018年に運転を開始する。

 鳥取県の企業局も県有地を利用してメガソーラーを拡大中だ。現在のところ鳥取空港の滑走路に沿って建設した「鳥取空港太陽光発電所」の規模が最も大きい。3万平方メートルの敷地に約1万枚の太陽光パネルを設置した(図9)。飛行機の離着陸に支障が出ないように、反射を抑えたパネルを採用した点が特徴だ。2015年3月に稼働して、発電能力は2MWある。

図9 「鳥取空港太陽光発電所」の太陽光パネル。出典:鳥取県企業局

 鳥取県は以前から風力発電に積極的に取り組んできた。2002〜2007年の6年間に合計41基の風車が設置されて、発電能力は59MWにのぼる。県内の全域が風況に恵まれていて、風力発電に必要な年間平均風速5メートル/秒を超える場所が多い。既存の風力発電に小水力・バイオマス・地熱・太陽光が加わり、5種類の再生可能エネルギーの組み合わせでバランスよく電力の自給率を高めていく。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −中国編−」をダウンロード

2016年版(31)鳥取:「日本最大の営農型メガソーラーで芝を栽培、拡大する小水力発電に光と影」

2014年版(31)鳥取:「太陽光と小水力に続いてバイオマスも、「森と緑の産業」が息づく地域に」

2013年版(31)鳥取:「中国山地から広がる小水力発電、日本海には巨大な太陽光と洋上風力」

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