水力とバイオマスで電力の27%を供給、地熱発電も始まるエネルギー列島2015年版(31)鳥取(1/3 ページ)

鳥取県では太陽光からバイオマスまで5種類の再生可能エネルギーの導入が活発だ。農業用のダムを中心に県営の小水力発電所が続々と運転を開始する一方、民間企業は木質バイオマス発電に取り組む。温泉水を利用した地熱発電所も稼働して、災害に強い分散型の電力源が県内に広がっていく。

» 2015年11月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 鳥取県は2011〜2014年度の4年計画で「とっとり環境イニシアティブプラン」を実行した。施策の第1に「エネルギーシフト」を掲げて、再生可能エネルギーを中心にした小規模・分散型の電源へ転換を進めることが最大の目的だ。というのも県内には火力発電所や原子力発電所がないために、長年にわたって他県で発電した電力に依存してきた事情がある。

 再生可能エネルギーの比率は水力を中心に2010年度の時点では24.6%だった。これを2014年度までに28.8%へ引き上げる目標を設定して対策に取り組んだ結果、目標を上回る31.0%を達成することができた(図1)。太陽光・小水力・バイオマスを利用した発電設備が着実に拡大した成果だ。

図1 鳥取県の再生可能エネルギー比率(2014年度の発電量)。出典:鳥取県生活環境部

 その中でも特に積極的に取り組んだのは、山間部における小水力発電所の建設である。4年間に県内4カ所のダムで小水力発電所が運転を開始したほか、農業用水路を利用した小水力発電も各地に広がり始めた。

 ダムに建設した小水力発電所の中では、2015年3月に稼働した「下蚊屋(さがりかや)発電所」が最も新しい。周辺の山から流れてくる水を農業用水として供給するダムの直下に建設した。ダムは堤体の高さが50メートル以上もあり、下流の自然環境を保護するために「河川維持放流水」を常に流している。この放流水を発電所に引き込む方式を採用した(図2)。

図2 「下蚊屋発電所」の全景(上)、発電設備の構成(下)。出典:鳥取県西部総合事務所

 発電能力は197kW(キロワット)で、年間の発電量は150万kWhを見込んでいる。一般家庭の電力使用量(年間3600kWh)に換算して420世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度で売電するだけではなく、災害で停電が発生した時には周辺の地域に電力を供給できるシステムを導入した(図3)。

図3 「下蚊屋ダム」の所在地(上)、災害時の電力供給(下)。出典:鳥取県商工労働部

 停電時に電力を供給する対象は、発電所が立地する江府町(こうふちょう)の2つの地区だ。町内をカバーする中国電力の配電設備に開閉器を取り付けて、電力の供給ルートを切り替えられるようにした。停電が発生しても2つの地区には小水力発電の電力を供給し続ける。

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