効率の悪い火力発電は撤廃へ、ベンチマークで電力業界を規制法制度・規制(1/3 ページ)

国全体のCO2排出量の4割以上を占める火力発電に対して、新たな規制の枠組みを導入する方針が固まった。石炭・LNG・石油による発電効率の目標値を設定したうえで、2種類のベンチマーク指標を使って事業者ごとに目標値の達成を義務づける。発電効率が低い老朽化した設備の廃止を促す。

» 2015年11月19日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 ようやく経済産業省が火力発電の規制に乗り出す。国全体で2030年度までにCO2(二酸化炭素)の排出量を2013年度比で26%削減する目標を掲げたものの、排出量の4割以上を占める火力発電の具体策は決まらない状態が続いていた。2030年度の電源構成(エネルギーミックス)では石炭・LNG(液化天然ガス)・石油の合計で全体の5割強に抑えることが目標になっているにもかかわらずだ(図1)。

図1 2030年度の電源構成の目標値(発電電力量ベース)。出典:資源エネルギー庁

 2014年度には石炭・LNG・石油の合計で発電電力量の88%を占めていることから、電力業界全体で火力発電の刷新を急がなくてはならない(図2)。動きが鈍い経済産業省と電力業界に対して、CO2排出量の削減を推進する環境省は石炭火力発電所の新設計画に反対意見を出しながら、新たな規制の枠組みを導入するように求めてきた。

図2 電源構成の推移。出典:資源エネルギー庁の資料から1990年度以降を抜粋

 経済産業省は11月17日に開催した委員会で、火力発電設備の発電効率をベースにした規制案を提示して事態の改善に動き始めた。石炭・LNG・石油それぞれの火力発電設備に発電効率の目標値を設定して、電力会社をはじめとする発電事業者が基準を上回るように義務づける方針だ。

 この新しい規制案によって、各社は発電効率の低い老朽化した設備の廃止を迫られる。特に老朽化が著しい石油火力の撤廃が急務になる。すでに2013年の時点で運転開始から40年を超えた石油火力発電設備は50基に達している(図3)。2030年には90%が40年を超えるうえに、燃料費が石炭の2倍以上もかかることから、離島の小規模な発電設備を除いて全廃に向かうことが確実になった。

図3 火力発電設備の運転状況(電力会社10社+J-Powerの合計。画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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