コレージュ・ド・フランスの教授であるJean-Marie Tarascon氏によれば、研究室規模でナトリウムイオン蓄電池の(正極材の)研究を6〜7年続けていたものの、産業規模の生産につなげるための手立てがなかったのだという。そこで、CNRSと組んだ。CNRSが基礎研究を担当し、CEA Litenが技術移転に取り組むことになった。
ナトリウムイオン蓄電池を実用化できるかどうかの肝は、電極のうち、適切な正極の材料や構造を見つけることができるかどうかにあるのだという。CNRSが最初に取り組んだのは、正極材の理想的な「レシピ」を解明することだった。6つの研究機関の協力によって、2年足らずで結果に至った(図3)。なお、開発した正極材料の組成は明らかにしていない*3)。
*3) Tarascon氏は、ナトリウムイオン蓄電池の正極材料の特許を出願している(検索情報)。それによれば、チタン酸ナトリウム(Na2Ti3O7)を正極材料として用いている。この物質は層状構造をとり、層間にナトリウムイオンが出入りすることで、充放電を実現する。
この時点ではTarascon氏の希望は叶えられなかった。正極材料を数グラム単位でしかバッチ生産できなかったからだ。バッチ生産の規模拡大をCEA Litenが担当すると、わずか6カ月で1キログラム単位まで生産量が拡大。CEA Liten内では生産規模拡大と並行して、18650型にまとめ上げることにも成功した。
今後は電池の商業化に向けて、蓄電池の信頼性を高め、設計を最適化するという。
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