ナトリウム電池が実用へ、再生エネから自動車まで蓄電・発電機器(1/3 ページ)

フランスの研究機関が、リチウムイオン蓄電池の性能に匹敵する「ナトリウムイオン蓄電池」の開発に成功した。希少なリチウム資源に依存しない、安価な蓄電池が期待できる。産業界で標準的な18650型にまとめ上げており、今後、再生可能エネルギーによって発電した電力の蓄電などに役立つとした。

» 2015年12月08日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 フランスの研究機関グループは、2015年11月27日、リチウムの替わりにナトリウムを用いた蓄電池を開発したと発表した(図1)*1)

 ルノーやフランスの蓄電池メーカーSaft Groupe、電力インフラや交通インフラに強みを持つ重電メーカーAlstomなど、今回の研究開発の成果について、既に約15の企業と協力している。

 最初に狙う用途は、風力や太陽光など再生可能エネルギーに由来する電力を蓄える系統用電池だ。その後、電気自動車(EV)向けの用途につながっていくという。

*1) フランス国立科学研究センター(CNRS)と同原子力・代替エネルギー庁(CEA)の一部門である新エネルギー・ナノ材料・イノベーション技術研究所(CEA Liten)を中心に、フランス電気化学エネルギーデバイス研究ネットワーク(RS2E)のメンバーである5つの研究機関が参加した。Centre interuniversitaire de recherche et d'ingénierie des matériaux、Institut Charles Gerhardt、Institut de chimie de la matière condensée、Institut de science des matériaux、Laboratoire de réactivité et chimie des solidesである。

図1 開発したナトリウムイオン蓄電池 出典:Pierre JACQUET/CEA

性能面で3つ、応用で1つ特徴あり

 蓄電池に要求される性能は数多い。用途によってどのような性能が重要なのかは異なる。例えば携帯型機器であれば高いエネルギー密度、定置型機器なら、寿命だ。

 発表資料によれば、開発した蓄電池では3点の性能が高いという*2)。まずは電池の重量1キログラム当たりに蓄えられる電力量(重量エネルギー密度)だ。約90ワット時/キログラムに達する。これは現在のリン酸鉄リチウム蓄電池の性能に匹敵するのだという。

 顕著な性能の低下を引き押さずに充電・放電できる回数(サイクル寿命)も長い。2000回を超えるとした。実用的なリチウムイオン蓄電池に匹敵する。

 最後に、具体的な数値は挙げていないものの、最大の特徴は充電の時間が短いことだと主張する。

 蓄電池をさまざまな機器と組み合わせて利用する際に役立つ工夫も取り入れた。図1に示したように産業界で標準的な18650型へ収めたことだ。標準的な形式の蓄電池として実装しておけば、既存の生産ラインに展開しやすく、さまざまな用途に応じて利用しやすい。発表資料によれば、各国の研究機関がナトリウムイオン蓄電池を開発しているものの、18650型の試作品を開発したと発表しているものはないという。

 18650型とは直径18ミリメートル、高さ65ミリメートルの円筒形の電池。一般的な単三電池よりも一回り大きい。例えば、テスラモーターズが電気自動車に採用している。

*2) CNRSと契約する科学ジャーナリストのLaure Coilloce氏によれば、リチウムイオン蓄電池が勝ち残った理由は、セル電圧が3.5ボルトと高いことと、リチウム(イオン)の重量が小さいことにあるという。なお、一般的な研究結果によればナトリウムイオン蓄電池のセル間電圧は、リチウムイオン蓄電池よりも低くなる(2〜3ボルト強)。開発品セル間電圧は公表されていない。

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