造船の町でメガソーラーとバイオマスが拡大、山の資源も発電に生かすエネルギー列島2015年版(38)愛媛(2/3 ページ)

» 2016年01月12日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

バイオガスで発電した電力を高く売る

 太陽光発電に続いてバイオマスの導入プロジェクトも活発に始まった。瀬戸内海に面した松山市の臨海工業地帯では、愛媛県で初の木質バイオマス発電所を建設する計画が進んでいる。県内の森林で発生する間伐材などの林地残材をチップに加工して燃料に利用する(図4)。

図4 「えひめ森林発電」の木質バイオマス調達ルート。出典:愛媛県農林水産部

 発電能力は12.5MWにのぼり、年間の発電量はメガソーラーを大幅に上回る8700万kWhを想定している。一般家庭の電力使用量に換算して2万4000世帯分にもなる。このバイオマス発電所から松山市の総世帯数(23万世帯)の1割以上が使用する電力を年間を通じて安定して供給できる。2年後の2018年1月に運転を開始する予定だ。

 発電所を建設・運営する事業者は「えひめ森林発電」で、豊田通商グループのエネ・ビジョンが設立した。発電した電力は四国電力に売電して年間に24億円の収入を見込む。このプロジェクトでは建設用地の確保や木材の供給面で愛媛県と松山市が支援した。地域の林業の活性化に加えて、発電事業による新規雇用を創出する狙いもある。

 同じ松山市内の下水処理場の構内では、バイオガス発電が2015年3月に始まっている。下水の汚泥を処理する過程で発生する消化ガスを燃料に利用する。1台で330kW(キロワット)の発電能力があるガスエンジン発電機2台を導入した(図5)。年間の発電量は400万kWhになり、下水処理場で消費する分を除いた300万kWhを売電する。

図5 「松山市中央浄化センター」のバイオガス発電設備。全景(上)、ガスエンジン発電機(左下)、バイオガス供給装置(右下)。出典:松山市下水道部

 松山市は売電先を年度ごとに入札で選ぶ。2015年度は新電力のエネットが1kWhあたり42.68円(税抜き)で落札した。固定価格買取制度ではバイオガス発電の買取価格を39円に設定していることから、その単価と比べて1割近く高い。年間の売電収入は1100万円も多くなる。

 バイオマスを利用した発電設備は、ごみの処理場にも広がっていく。今治市では4カ所に分散する処理場を1カ所に集約するために、新しい施設の建設を進めている(図6)。新施設では、ごみの焼却熱で蒸気を発生させて発電に利用する計画だ。

図6 「今治市新ごみ処理施設」の完成イメージ。出典:タクマ

 発電能力は3.56MWを予定している。バイオマス発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を80%として計算すると、年間の発電量は2500万kWhになる。一般家庭で7000世帯分に相当する。発電した電力は施設内で消費したうえで、余剰分を売電する方針だ。2018年度から新施設の運営を開始する

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