原子力発電所と火力発電所の選別が進む、2030年に設備半減へ2016年の電力メガトレンド(5)(3/4 ページ)

» 2016年01月15日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

火力発電でも40年超が185基に

 先行きが不透明な原子力発電と比べると、火力発電の方向性は明確だ。2030年までに発電に伴うCO2排出量を削減するために、効率の悪い石油火力を離島などの小規模な発電設備を除いて撤廃する。石炭火力とLNG(液化天然ガス)火力は震災前の比率まで低下させて、全体で5割強まで引き下げる(図7)。そのために石炭火力とLNG火力のうち老朽化した発電設備の廃止も進めていく。

図7 2030年度のCO2排出量と電源構成の目標値(発電電力量ベース)。出典:資源エネルギー庁 

 政府は2030年のCO2排出量を1kWh(キロワット時)あたり0.37kg-CO2(CO2換算キログラム)に低減する目標を設定した。電力会社10社の2014年度の実績では、最も低い中部電力でも0.494、最も高い沖縄電力では目標値の2倍以上の0.816もある。CO2を排出しない原子力と再生可能エネルギーを目標通りの比率まで増やせたとしても、現時点でCO2排出量が少ない中部電力でさえ2030年までに約20%を削減する必要がある。

 電力会社をはじめ大規模な火力発電所を運転する事業者すべてが計画的に改善策を実行しなければ、世界に公約したCO2排出量の削減目標を達成できなくなってしまう。各社の改善状況を把握するために、早ければ2016年度からベンチマークによる規制を導入する見通しだ。

 このベンチマークは2種類の指標を組み合わせて、事業者ごとの火力発電設備の効率を評価する(図8)。石炭・LNG・石油火力の発電効率を実績値とエネルギーミックスの比率で計算して、目標値から著しく低い事業者に対しては政府が改善勧告や改善命令を出して対策の強化を促す。

図8 事業者別に火力発電の効率を評価する2つのベンチマーク指標。実績値(上)とエネルギーミックス(下)による目標値。出典:資源エネルギー庁 

 数多くの火力発電所を抱える電力会社10社とJ-Power(電源開発)の状況を見ると、2030年の時点で運転開始から40年を超える設備は合計で185基にのぼる。そのうち約半分が石油火力だ。設備容量では石炭火力の28%、LNG火力の46%、石油火力の90%が該当する(図9)。これらを廃止すれば、火力発電の比率はエネルギーミックスの目標値に近い6割程度まで低下する。

図9 火力発電設備の運転状況(電力会社10社+J-Powerの合計。画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁 

 さらに運転開始から40年未満の発電設備の中で効率の低いものを廃止しながら、高効率の発電設備を新設していけば、2030年の目標値を上回ることは十分に可能だ。LNG火力と石炭火力の発電効率を高める技術の開発は2000年代に入って着実に進んできた。

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