全世界を対象に再生可能エネルギーの導入を推進する国際機関が経済効果を初めて試算した。世界のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの比率を2倍に拡大させると、GDPが0.6%上昇する結果になった。2030年には再生可能エネルギー分野の雇用者数が2000万人を突破する。
再生可能エネルギーの経済効果を試算したのはIRENA(国際再生可能エネルギー機関)で、世界140カ国以上と欧州連合が加盟している。化石燃料に代わって再生可能エネルギーを増やすことで、技術開発の投資や新規設備の増加、エネルギー価格や環境対策コストの変動などにより経済にインパクトを与える。その効果を世界各国の導入量の予測をもとに分析した(図1)。
IRENAが設定した導入量の予測条件は3通りある。2010年から2030年までの導入量の増加を、(1)各国の従来の見通しに基づいた場合(Reference)、(2)全世界のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの比率を2倍に増やした場合(REmap)、(3)さらに空調機器や自動車などの輸送機器の電化を促進したうえで再生可能エネルギーの比率を2倍に増やした場合(REmapE)である。
この3通りで世界のGDP(国民総生産)に対する影響を試算したところ、従来の導入見通しに基づいた(1)の場合と比べて、再生可能エネルギーを倍増させる(2)ではGDPが0.6%上昇する。さらに電化を促進する(3)では1.1%の上昇が見込める(図2)。
金額に換算すると、(2)のケースでは7060億米ドル(約85兆円)、(3)のケースでは1兆3000億米ドル(約156兆円)のGDPが増えることになる。前者はコロンビアとマレーシアのGDPの合計額に匹敵して、後者はチリと南アフリカとスイスのGDPの合計額に相当する。
この経済効果を国別に見ると、なんと日本が最大の恩恵を受ける結果になっている。2030年までに再生可能エネルギーの比率を倍増させる(2)のケースでは、GDPを2.3%押し上げる効果が期待できて、主要国の中でトップだ(図3)。空調機器と輸送機器の電化を促進する(3)のケースでは3.6%の押し上げ効果になり、ウクライナ(3.7%)に次いで第2位に入る。
日本のGDP(実質)は2014年度で525兆円にのぼり、政府は2030年度に711兆円まで拡大させる目標を掲げている。かりに2030年度のGDPを2.3%上昇させることができると、金額では約16兆円の増加になる。再生可能エネルギーの導入を加速させる経済効果は大きい。
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