再生可能エネルギーの導入量を拡大するメリットはGDPの増加だけではなく、生活環境(Welfare)を改善する効果もある。IRENAは経済面のほかに、雇用の増加や健康・教育費の増加といった社会面な影響、さらに環境面の影響を含めて、生活環境を指数で評価した(図4)。
その結果、2030年までに再生可能エネルギーを倍増させる2つのケースでは、生活環境の指数が2.7〜3.7%改善することがわかった。主要国のいずれにおいても指数は改善する(図5)。日本では平均を上回る3.3〜5.2%の改善効果が期待できる。最大の恩恵を受ける国はインドだ。
生活環境に影響を与える要因の1つは雇用である。2014年の時点で再生可能エネルギー分野の雇用者数は全世界で770万人にのぼった。最大は中国の339万人で、日本では21万8000人を数える(図6)。中国と日本の差はほぼ人口に比例している。ただしGDPの規模から考えれば、日本の雇用者数は中国と比べて圧倒的に少ない。
2030年になると、再生可能エネルギーの導入量を従来の見通しで予測した場合には、全世界の雇用者数は1350万人に増える。もし再生可能エネルギーの比率を倍増させることができれば、2000万人以上の雇用が見込める(図7)。その場合には日本でも約5倍に増えて100万人を超える予想だ。
雇用者数をエネルギーの種類別に見ると、2030年の時点でも化石燃料の分野が最も多くて2500〜2700万人程度にのぼる。これに対して再生可能エネルギーの比率を倍増させた場合には、化石燃料とほぼ同程度の雇用者数が期待できる(図8)。中でも太陽光とバイオマスの雇用者数が伸びる見通しだ。最も少ない風力でも原子力と比べると2倍以上の雇用を創出する。
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