営農型発電設備の公正で健全な発展を目指す全国営農型発電協会(Farm X)は同発電設備の導入や運営の際の課題を解決するための取り組みを進めている。
営農型発電設備が一定の要件を満たすことで設置可能となってから、2016年で4年目をむかえる。農業と売電の収入を両立できるため、各地域で同設備の導入が進んでおり、全国で約500件の認可実績がある(2015年12月現在、全国営農型発電協会調査)。しかし、作物に適した遮光率や農作業に支障のない空間を十分確保できていない設備、また導入を検討する段階で案件が頓挫するケースも多く見られ普及、発展には多くの課題が残されている。
こうした課題に対する解決策を考案し実行、実現していくことを目的に同協会は2015年10月1日に発足。EPC事業者、農業生産法人、農家などが加盟している。同協会が現在取り組んでいる課題は以下の4点である。
これらを具体的にみると、影分布シミュレーションの開発は営農型太陽光発電の根本的な問題である影が圃場(ほじょう)に落ちることを回避することを目指すもの。上空でモジュールが遮っている光は遮光率として表現されているが、実際はその数値通りに遮光されていない可能性がある。それは季節により太陽高度が違い、また時間により太陽の位置が違うためだ。協会ではどのような影が圃場に落ち、作物にどう影響を及ぼすのかといった研究を行い、その情報を農家にも分かりやすく提供する。
普及・発展への正しい基準組成については、発電設備の設置により、変化する日照量が作物の育成に与える影響を大学、企業との連携や共同研究により進め、作物ごとに生育結果を集積し、正しい基準を作り上げることの必要性を訴えていくため実施している。これを情報発信することで営農型発電認可基準をより公平、公正で安全なものとなるよう貢献していく。
さらに、協会に登録店という形で登録に賛同した農家・農業生産法人などに発電設備下での営農の協力依頼をしていく体制を構築。これにより数十年先になっても切れ目のない耕作支援の仕組み作りを行う。
新たなリスク分散への取り組みは、金融機関による融資以外にも、市民ファンドや匿名組合などの組成により資金を得る方法を提案し、近隣や市民の理解をより得た形で運営する仕組みを選択できるように準備していくもの。また、個々の農家が土地の貸し出しのみ、設備下部の営農のみ、設備投資のみなど、さまざまな立場・状況の農業関係者がそれぞれの方法で営農型発電設備による利益を分配することを推進。これにより地域一体で営農型発電設備への理解が進むことを目指す。
日本の農業は集約が進まず、農家の高齢化、後継者不足などの課題が長年にわたり指摘されている。その中で、協会は電気というエネルギーを売ることで投資をしっかり回収できる営農型発電設備は、今後の農業の経営改革や資産でもある農地の有効な利用法として国土の狭い日本に定着すると、確信しているようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.