電力会社に独占禁止法の新たな規制、スイッチングの妨害などが対象に動き出す電力システム改革(56)(2/3 ページ)

» 2016年03月09日 09時56分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

セット販売の不当な安値は禁止

 小売分野の2つ目の望ましい行為はスイッチング(契約変更)の円滑化だ。需要家が電力会社から別の小売電気事業者へ契約を変更する場合には、電力会社の送配電部門が供給関係を切り替える必要がある(図4)。この一連の手続きが円滑に進まないと自由な競争の阻害要因になる。

図4 電力の供給契約を変更するスイッチングの流れ。出典:資源エネルギー庁

 指針ではスイッチングを支援する役割の広域的運営推進機関と電力会社の送配電部門に対して、スイッチングの申し込み状況に合わせて対応能力を増強するように求めている。その点では東京電力が4月1日の全面自由化を前にスマートメーターの設置が遅れて、スイッチングに影響を及ぼしている行為は指針に反すると言える。

 一方で公正な競争の観点から問題になる行為は3つある(図5)。その中でもセット販売に関する規制が厳しい。地域内で販売量の多い電力会社の小売部門(「みなし小売電気事業者」と呼ぶ)が他の商品と電力をセットで販売する場合に、不当な安値を設定すると独占禁止法で問題になる。さらに電力会社が提携先に対して、他の小売電気事業者に不利な条件を出すように求めることも禁止する。

図5 小売分野の指針で新たに追加した項目(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 このほかに電力会社の小売部門がスイッチングを妨害するような行為を実施すると、独占禁止法と電気事業法の両方に違反する。電力会社を含めて小売電気事業者が需要家に対して誤解を招くような情報を提供することも電気事業法の違反対象になる。違反行為を監視する電力取引監視等委員会では「電力小売全面自由化5つの嘘」を公表して、該当する勧誘があった場合には同委員会に通報するように求めている(図6)。

図6 電力小売全面自由化に関する「5つの嘘」。出典:電力取引監視等委員会

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