カチオンが移動するリザーバ型蓄電池にはハロゲン化物を用いるもの以外に、硫化物を用いるものがある。図3で「M-S」と示したタイプだ。以下のような反応で充放電する。
4Li +アモルファスTiS4 ↔ Li4TiS4
これまでLiS系はサイクル寿命が非常に短かったのだという(図5左)。これは放電時に正極材料の硫黄が電解液に溶け出してしまうためだ。
そこで金属(上の反応式ではチタン)と共有結合するような方策を講じた。安定した充放電が可能になり、おそらくチタンと硫黄がアモルファス構造を採っていると予測できたが、確認する手段がない(性能を改善する糸口がない)。
「アモルファス構造では、短い周期構造がないため、通常のX線回折では観察できなかった。そこで、大型放射光施設Spring-8の高エネルギー回折を用いて、長い範囲の秩序構造の情報を得た。放電が終わったLi4TiS4と充電が完了したTiS4の電極の全体像を比較することにより、図5左の下に示した状態を採ることを確認できた」(同氏)。
3つ目の開発成果は、アニオンが移動するリザーバ型蓄電池に関するもの。高いエネルギー密度を狙っているものの、リチウムは登場しない。
図6に示したように負極に金属ハロゲン化物、正極に別の金属を置く。両極間を移動するのはハロゲンのイオンだ。例えば、フッ化物イオン(F−)を用いたときは、次のような反応で充放電する。ランタン(La)の価数が3つ、銅(Cu)の価数が2つ変化しており、効率よく電子を扱うことができる。多電子移動が可能であるため、エネルギー密度の高い蓄電池として期待できそうだ。
2LaF3 + 3Cu ↔ 2La + 3CuF2
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.