リザーバ型蓄電池として2種類を研究対象とした。カチオン(陽イオン、具体的にはリチウムイオン)が移動する方式と、アニオン(陰イオン、具体的にはフッ化物イオンF−や塩化物イオンCl−)が移動する方式だ。これが3つの成果に対応する。
図3のような金属リチウム負極*6)と、フッ化鉄(FeF3)正極を備えたカチオン移動方式では、大量のリチウムイオンを利用できるため、容量が多くなる。課題はこうだ。蓄電池を放電したときに正極側で生成するフッ化リチウム(LiF)が固体になり、反応が進みにくくなることだ。こうなると、充電性能が落ちる。
3Li + FeF3 ↔ 3LiF + Fe
*6) 金属リチウム負極には固体電解質界面の生成と、針状・樹状のリチウムデンドライトの生成という2つの課題があることが1970年代に分かっている。「RISINGプロジェクトでもこれらの課題は解決できていない。ただ、エネルギー密度を高めようとしたとき、金属リチウム負極を使うだけではなく、正極で多数のリチウムイオンを受け入れる仕組みがなければならない」(同氏)。
RISINGプロジェクトでは、フッ素を取り囲むようにして弱く結び付き、電解液への溶解性を高める添加剤(アニオンレセプター)の効果を確認した。
図4はアニオンレセプターがない場合(白色)とある場合(オレンジ色)を比較したもの。右下がりになると充電容量が維持できていないことになる。「正極で多くのリチウムを蓄えられるようになり、繰り返し特性が高くなったことが分かる。今後は、グラフがなるべく水平になるように研究を進めたい」(同氏)。
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