10kW以下に需要あり、小水力発電自然エネルギー(2/4 ページ)

» 2016年05月30日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

10kW対応の機器を選択できない

 神戸市の水道システムをごく単純化すると、次のようになる。まず、上水用のダムなどから取水し、浄水場に送る。水質を調整した後、ポンプアップして、最初の配水池に送る。幾つかの配水池を経由して、住宅に水道水が届く。

 「水道局としては、複数種類の小水力発電システムを利用したい。ダムから上水場の間は水量も多いため、大型の小水力発電システムを導入済みだ。浄水場から供給を受ける配水池以降は100kW以下が適する。配水池から住宅へ供給する部分では10kW以下が望ましい。しかし、これまで水道局が調査したところ、10kW以下に対応する小水力発電システムを見つけることができなかった。出力100kW以下の小水力発電システムを実用化したダイキン工業が、次に10kW以下の開発を進めるため、共同研究を始めることになった」(同施設課)。

 水力発電システムの最大出力は、水の流量と有効落差の2つから決まる。ダイキン工業が開発済みの発電システムでは、図4に示した範囲で導入可能だ。

図4 発電可能な運転範囲(流量・有効落差) 縦軸・横軸とも対数目盛。 出典:ダイキン工業

 流量や有効落差が小さくなればなるほど、出力は小さくなるものの、導入可能な箇所は増える。機器の出力をどの程度に決めるかが重要だ。

 「10kW以下の超小型マイクロ水力発電システムとして実際に開発する試作機の仕様は、今後、神戸市と共同で実施する詳細調査によって決定する。これまでの基本調査からいったん5.5kWクラス(出力範囲2.2〜5.5kW)を想定している」(ダイキン工業)*3)

*3) ダイキン工業の小水力発電システムは、既存の水道配管の間に挟みこむ形を採る。その場合、どの程度の直径の配管に接続するかを決めなければならない。「詳細調査の後に決めるものの、5.5kWクラス試作機では直径50〜100mmと考えている」(ダイキン工業)。

開発済みの発電システムを検証する

 今回の共同研究では2つの研究を並行して進める。10kW以下機の開発の他に、ダイキン工業が開発済みの小水力発電システム(出力22kW)の導入だ*4)。「住宅に供給される水道水に影響が出ないよう、2つの配水池の間にある福谷中層配水池(西区櫨谷町)に導入する」(同施設課)。

 最大出力は24.1kW。年間発電可能な電力量は211MWhだ。一般家庭約65軒の年間消費電力をまかなう電力量だという。図5中央に描かれている「マイクロ水力発電(100kW以下)」が、この22kWの設備だ。

 なぜ開発済みの機器を導入するのだろうか。

 理由は3つある。第1に、ダイキン工業が新規に開発した遠隔制御機能を確認する。「この機能は、今回福谷中層配水池に設置するにあたって新たに開発した。水道事業者がマイクロ水力発電システムの発停や流量を遠隔で操作するために使う。神戸市水道局が上水の使用状況に応じて配水池への流量を柔軟に調整することを可能にするためだ」(ダイキン工業)。

 「遠隔監視機能は役立つと考えている。流量変化はもちろん、現状ではバルブ・弁の故障も分かりにくい。故障発見にも使えそうだ。今後は水質も把握できるとうれしい。なぜなら水運用ではなんといっても水質を維持することが重要だからだ」(同施設課)。

 第2に長期的な性能を検証する。第3に、メンテナンスなどの運用コストを検証する。「マイクロ水力発電システム本体は、適切なメンテナンスを適宜実施することが必要だ。耐用年数は20年程度と想定している。長期運転実績を踏まえて再検討したい」(ダイキン工業)。

*4) 2013〜2015年度の環境省の実証事業で開発・実証済み。

図5 複数の小水力発電システムを利用する 出典:神戸市(一部を当誌が編集)

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