原発稼働で悩む日立、IoTでエネルギー事業の利益率改善へエネルギー管理(1/2 ページ)

日立製作所は「Hitachi IR Day 2016」で、今後の電力・エネルギー事業の戦略について説明した。課題となる低い営業利益率の改善を目指し、各分野でIoTを活用した新ソリューションでの成長を目指す。

» 2016年06月02日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 日立製作所(以下、日立)は2016年6月1日に「Hitachi IR Day 2016」を開催し、同年5月に発表した2016〜2018年度の3カ年で取り組む新中期経営計画(以下、新中計)に基づく各事業の今後の戦略について説明した。2016年4月から新体制に入った電力・エネルギー事業で課題となるのは、低迷する営業利益率の改善だ。

営業利益改善への体制変更

 電力・エネルギー事業の2015年度実績は売上高5195億円、営業利益率は2.2%だった。2016年度の見通しについては、火力発電をはじめとする大規模プロジェクトの減少を考慮し、売上高4630億円で、営業利益は0.6%としている。日立グループ全体の営業利益率を現在の6.3%から8%超えにまで成長させるという新中計の目標値を考えると、非常に低い値だ。

長澤氏

 こうした目標に向けた電力・エネルギー事業へのテコ入れ策として、日立は2016年4月から電力・エネルギー業務統括本部を新設し、その下に「エネルギーソリューションユニット」「電力ビジネス」「原子力ビジネス」の3つのビジネスユニットを置く体制変更を行っている。

 電力・エネルギー事業の新中計について、日立の執行役常務で電力・エネルギー業務統括本部副統括本部長を務める長澤克己氏は「短期的には営業利益率の改善に注力する」と述べる。電力・エネルギー事業全体の2018年度の売上高目標は5500億円、課題の営業利益率は2015年度比で6.5ポイント増の7.1%まで伸ばす計画だ。まずはこの目標に向け、人材配置の最適化や生産性の改善などによるコスト削減に取り組む(図2)。

図1 日立の電力・エネルギー事業の成長目標(クリックで拡大)出典:日立製作所

 そして事業の成長エンジンとして特に注力するのが、IoTやAI(人工知能)をはじめとするデジタル技術を活用した新しいサービスの開発と、それによる新市場の開拓だ。これは日立グループ全体の事業戦略でもある。電力システム改革によるスマートメーターの普及や需給管理、系統安定化など、電力・エネルギー分野でもITを活用した次世代システムを求める動きが進む中で、日立が自社の強みとして掲げる「IT(情報技術)」と「OT(制御技術)」を積極的に活用したサービスの開発を進めていく。

 「世界の発電量は今後もまだまだ増えていくと見ている。さらに、地球温暖化に対応するための省エネ需要も拡大しており、再生可能エネルギーや原子力分野も市場成長の見込みがある。こうした中でITとOTを組み合わせたソリューションを求めるニーズや市場が広がってくると考えている」(長澤氏)

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