2015年の調査によれば、フランス国民の内、電気契約先を変えることができることを知っている人は、いまだに約半数(55%)にとどまっている。また実際にEDFから他社に電気契約の切り替えを行った人はその中でもさらに少なく12%のみであったという。さらに、切り替えた多くの世帯が、EDFからの切り替え先に選んだ企業は、かつてのガスの国有独占企業のENGIE(エンジー)社であり、自由競争というには程遠い状況が生まれているのが現状だ。
フランスでは、日本が電力会社が地域ごとに10社で寡占していた状況と異なり、電力会社もガス会社も1社独占という市場環境があった。そうした背景から多くのフランス人が電気のEDF社もガスのENGIE社もどちらも同じインフラ関連会社と認識しているのだ。実際に、フランス人の中で、EDF社とENGIE社は別会社で両社が競合であると把握している人はわずか28%のみという状況である。こうしたことから見ても、電力自由化というものに対するフランス人の認識レベルは非常に低いことが分かる(図2)。
こうした状況の結果、フランス人のほとんどが、特に考えることもなく電気契約にEDFを選び、そのまま契約を続けているとう状況にある。フランス人の日々の会話では「EDF」が「電気」の同義として使用されている。こうしたことを考えるとどれだけEDFのブランドイメージが国民にいかに強く根付いているかがよく分かる。
ただ、こうしたEDF寡占の状況は最近になって徐々に変化する兆しを見せ始めてきた。大口・中口需要家向けの規制料金は2015年には完全に撤廃されたためだ。大口・中口需要家のうち11.7%が新規参入者へ電気契約の切り替えを行ったという(2015年12月31日現在)。
さらに一般家庭における行動にも変化がみられるようになってきた。2015年の第4四半期の数字によれば新規電気契約のうち29%が新規参入企業によるものであった。電気契約の切り替えを検討する消費者は徐々にであるが増えてきており、特にその傾向は引っ越し時に強いということが分かっている。
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