2015年度に電力会社10社が排出したCO2の総量は前年度と比べて6.3%減少した。電力需要の縮小に合わせて火力の発電量を減らしたほか、CO2を排出しない再生可能エネルギーによる電力の買取量が増えた効果だ。九州電力だけは原子力発電所を再稼働させてCO2排出量を15%以上も削減した。
電力会社10社が政府に報告した2015年度のCO2(二酸化炭素)排出量を合計すると4億2868億トンにのぼる(図1)。前年度と比べて6.3%の減少で、電力がもたらすCO2の排出量は着実に減ってきた。国全体のCO2排出量のうち電力が4割強を占めることから、政府は2030年度までに電力由来のCO2排出量を2013年度比で35%削減する方針だ。
地域別に見ると九州電力の削減率が最も大きくて15.2%に達した。九州電力は2015年8月から「川内原子力発電所」を再稼働させて、火力による発電量を減らしたことで大幅なCO2の削減に結びつけた。ピークだった2013年度と比べるとCO2排出量は2割以上も少なくなっている(図2)。いまや原子力発電所を再稼働させる社会的な意義は地球温暖化対策しか見当たらない。
九州電力に次いで関西電力のCO2削減率が9.2%で大きい。関西電力は2015年度の販売量が10社の中で最大の5.2%も減少したため、火力の発電量を抑制してCO2排出量を削減した(図3)。原子力の「高浜発電所」は2016年2月に再稼働したものの、1カ月余りで運転停止に追い込まれた。2015年度の原子力の利用率は1%にとどまり、当面は火力発電の高効率化を進めてCO2削減に取り組まざるを得ない状況だ。
そのほかの電力会社の状況を見ると、石油火力の比率が高い沖縄電力のCO2排出量が0.2%しか減っていない。石炭火力の比率が高い中国電力は3.3%減、北陸電力は4.3%減で、いずれも10社の平均値を下回っている。
一方で東京電力と中部電力は石油や石炭よりも高効率でCO2排出量が少ないLNG(液化天然ガス)の火力発電所を数多く運転中だ。両社ともに2015年度のCO2排出量はさほど減っていないが、電力1kWh(キロワット時)あたりの「CO2排出係数」は10社の中で最も低い水準を維持している。
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