逆潮流で電気をシェア、住宅蓄電池を統合して街を仮想発電所にスマートシティ(1/2 ページ)

積水化学は茨城県つくば市の「スマートハイムシティ研究学園」でバーチャルパワープラント(VPP)を構築する実証試験を行う。太陽光発電設備を備えた20棟の住宅の蓄電池を統合制御し、街全体で電力を効率的に利用する。蓄電池から既存電力網に逆潮流を行い、その影響度なども検証していく。

» 2016年08月31日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 積水化学工業(以下、積水化学)は2016年8月30日、同年10月から茨城県つくば市でバーチャル パワープラント(以下、VPP)の実証試験を開始すると発表した。経済産業省が実施する「バーチャルパワープラント構築事業」の一環として行うもので、東京電力パワーグリッドと共同で実施する。複数の分散電源を統合制御し仮想的な発電所を作るVPPを検証する。

 実証試験を行うのは、茨城セキスイハイム販売する分譲地「スマートハイムシティ研究学園」だ(図1)。同エリアは建売住宅に太陽光発電設備(PV)とHEMS、蓄電池を標準搭載するなど、先進的な分譲地として2016年6月から販売を開始。同年8月29日時点で、建売住宅は全て完売している状況だという。

図1 「スマートハイムシティ研究学園」出典:積水化学工業

 実証ではPV、HEMS、蓄電池を備える住宅20棟と、積水化学つくば事業所の電力需給をEMS(エネルギー・マネジメント・システム)で統合・制御する。実証エリア全体の電力利用状況に合わせて、住宅20棟に設置した蓄電池を活用して住宅間、 住宅と事業所間で電力をシェアしていく。

 実証の大きな目的は、各家庭で発電されたPVの電力を、街全体で効率良く活用していくことにある。EMSに積水化学が開発した「タウン・エネルギー・マネジメントシステム(TEMS)」を使用し、住宅20棟に設置されている家庭用蓄電池をクラウド上で統合・ 制御していく。これにより各棟の蓄電池にためられた太陽光で発電した電力を、必要に応じて既存配電網に流し(逆潮流)、各住宅と積水化学工業のつくば事業所で活用する(図2)。実施期間は2016年10月〜2018年9月まで。約2年間かけて主に3つの項目を検証していく。

図2 実証のイメージ 出典:積水化学工業
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