東京大学などの研究グループは、透明かつ紫外線を防ぐ太陽電池を実現できる新材料の合成に成功したと発表した。
東京大学物性研究所の松田巌准教授らの研究グループは2016年8月31日、2種類の異なる酸化物を接合させたヘテロ界面において、光学応答の主要な現象の1つである「光起電力」(物質に光を照射することで起電力が発生する現象)を人工的に制御することに成功したと発表した。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)の組頭広志教授と東京工業大学の小澤健一助教との共同研究で得られた成果で、透明かつ紫外線を防ぐ太陽電池などの実現にも活用できる可能性があるという。研究成果の詳細はドイツの学術誌「Advanced Materials Interfaces」に掲載された。
太陽光などのクリーンなエネルギーに注目が集まる中、こうしたエネルギーをより効率的に活用できる次世代の電子デバイス材料の研究開発も進んでいる。その中で金属酸化物は次世代の材料として注目されている。チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)はその代表的な金属酸化物であり、近年その表面は特異な電子特性を示すことが分かっていた。しかしSrTiO3表面の光学応答に関する報告はほとんどなかった。
今回、研究グループはSrTiO3結晶と格子定数の近いルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)をSrTiO3基板上で数原子層の厚さに成長させて、SrRuO3/SrTiO3のヘテロ構造を作製した。成膜はレーザーを用いた結晶成長法で実施した。
このヘテロ構造を、大型放射光施設「SPring-8」の高輝度軟X線ビームラインを用い、光電子分光測定を行ったところ、SrRuO3原子層の膜厚に依存してSrRuO3膜の電子状態が半導体から金属に変化し、それに伴いSrTiO3基板はキャリア電子密度が高い状態から低い状態に変わることが分かった(図1)。
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