孫氏が苦言「電力はなぜつながらない」、自然エネルギーの国際連携自然エネルギー(1/2 ページ)

自然エネルギー財団は設立5周年記念シンポジウムをこのほど東京都内で開催した。同財団は東日本大震災後、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏が自然エネルギーを基盤とする社会の構築などを目的に設立。現在、シンポジウム、ワークショップなどを通じて自然エネルギー普及のための調査研究、提言、政策作りなどの活動に取り組んでいる。

» 2016年09月13日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 2016年9月9日に開催された、自然エネルギー財団設立5周年記念シンポジウムは「世界中の電力網に自然エネルギーをつなぐ〜脱炭素の時代へ急転換する世界ビジネス〜」をテーマに、自然エネルギー関連の有識者、国内の地方自治体首長をはじめ米国、中国、韓国、ロシアの電力事業関係者らが参加した(図1)。

photo 図1 ソフトバンクグループ代表の孫正義氏(左から3番目)とディスカッションに加わったアジア各国の電力関係者たち

「Asia Super Grid」ビジョンの実現

 冒頭、スピーカ−として登場した孫氏は「脱炭素を目指すアジア」というタイトルに合わせて2011年9月に発表した「Asia Super Grid」ビジョンについて述べた。

 東日本大震災の発生後、現地に赴いた孫氏はその状況を見て、原発に代わる安全・安心そして安価な代替エネルギーとして、自然エネルギーの創造を決意したという。ただ、当時は日本だけでは自然エネルギーによる発電量は少なかったことから、他のアジア諸国で発電し、電力網をつなぎ日本まで送ることでそれに対応することを考えた。それが同ビジョンである。ただ、それを現実化するためには採算面からも政治的な側面からも不可能だと思われていた(図2)。

photo 図2 「Asia Super Grid」のイメージ 出典:自然エネルギー財団

 そうした中で、孫氏はまず国内から太陽光、風力による発電を開始した。ソフトバンクの関連会社であるSBエナジーは現在計画中のものも含めて33サイトを運営している(図3)。その後、海外進出を行い、自然エネルギーを生み出す環境に恵まれたモンゴルで7GW(ギガワット)分の風力発電が可能な土地を入手した。既に一部で発電所の建設を開始している(関連記事)。さらにインドで350MW(メガワット)のソーラー発電所を現在建設中だ。インドでは将来的に20GW程度の発電を行う計画。「恐らくインドでは世界最大の風力・ソーラー発電所をわれわれがプロジェクトとして行うことになる」(孫氏)という。

photo 図3 SBエナジーの国内における自然エネルギー発電サイト 出典:自然エネルギー財団

 孫氏が、同ビジョンを発表した当時に比べて、現在はソーラー、風力発電所の数は急激に増え、発電量も大幅に拡大している。ただ、これを各国の電力網をつないで送電することは政治的にも難しい状況にあった。こうした厳しい中で、孫氏は2016年中国国家電網(SGCC)前会長の劉振亜氏に出会う。

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