収入管理の業務コストは大きい、口座振替やコンビニ収納の仕組みを用意電力自由化で勝者になるための条件(14)

小売電気事業者に必要な収入管理の業務は特殊なものではなく、既存の事業の仕組みを利用できる。料金の収納方法として口座振替やクレジット決済を用意するほか、コンビニ収納も欠かせない。収入管理には大きなコストがかかるため、効率を重視して仕組みを構築する必要がある。

» 2016年09月16日 15時00分 公開

連載第13回:「送配電事業者と連携する顧客管理業務、需要家の使用量を取得して料金計算に」

 収入管理に関しては既存の事業の仕組みを利用するケースが圧倒的に多く、新規で構築することは少ない。料金計算の結果を既存の仕組みにどのように連携するかを定義すれば、問題なく業務フローを組み立てることができる。外部の収納代行事業者に委託しているケースでも、同様の連携を検討するだけで済む。

 ただし電気の供給停止について、特に家庭向けの低圧小売の場合には、対応方法と業務フローを検討しておかなくてはならない。料金の支払いが滞った需要家に対して解約手続きを実行して、最終供給保障の業務を送配電事業者に引き継ぐ必要がある。

 電力の小売専門の事業者の場合には、外部の収納代行会社を利用する方法も含めて、収入管理の仕組みを整備することになる。通常は口座振替、クレジット決済、コンビニ収納の3種類を用意すれば、ほぼカバーできる(図1)。収納業務の委託コストは比較的高いので、全体の採算ラインや効率の良い回収方式を念頭に置いて検討する必要がある。

図1 収入管理の仕組み(画像をクリックすると拡大)。CIS:顧客情報管理システム、GW:ゲートウエイ

 口座振替の登録処理はWEBだけで完結させる方法もある。ただし需要家には入力する手間がかかるため、紙ベースの申込方法も準備しておいたほうがよい。コンビニ収納では「ペーパーレスコンビニ収納」がおすすめである。払込取扱票の印刷・送付コストを抑制できるうえに、リアルタイムに入金確認ができる。コンビニ収納は特に地方の需要家のあいだでニーズがある。

 収入管理の業務は決済処理を含めるとオペレーションコストの大きな部分を占める。顧客のターゲット層に応じて、効率的な決済方法の仕組みを構築することが重要になる。自社の既存システムに組み込むメリットや代行会社に委託する選択肢も想定しながら、最適なコストで実施することが望ましい。

連載第15回:「需要家にWebで情報を提供するメリット、ポータルは導線の作り方が重要」


著者プロフィール

平松 昌(ひらまつ まさる)

エネルギービジネスコンサルタント/ITコスト削減コンサルタント。外資系コンピュータベンダーやベンチャー事業支援会社、電力会社の情報システム子会社を経て、エネルギービジネスコンサルタントとして活動中。30年間にわたるIT業界の経験を生かしてITコスト削減支援および電力自由化における新電力事業支援を手がける。Blue Ocean Creative Partners代表


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