電気料金の見積もりが成否を分ける、高圧と低圧で異なる戦略電力自由化で勝者になるための条件(8)(1/2 ページ)

小売電気事業者が顧客を獲得するためには、電気料金の見積もりを迅速かつ的確に実施することが重要である。収益にも影響を与えるため、適切な業務フローとシステムの整備が欠かせない。企業を相手にする高圧の小売では精緻な見積もりが必要だが、家庭を対象にした低圧の場合には簡易的な方法でコストを抑えることも検討したい。

» 2016年08月22日 15時00分 公開

連載第7回:「顧客獲得を決める受付業務、対面・コールセンター・WEBの仕組み」

 電気料金の見積もり業務は、金額が大きい高圧の事業では収益に与える影響も大きい。高圧の小売事業では最も重要な業務と言える。顧客に提案する前に慎重にシミュレーションする必要がある。高圧の需要家を対象にした見積もり作成の業務フローは次のような手順が標準的である。

 まず需要家の過去1年分の使用情報を入手して、その顧客の同業他社の実績データがあれば参照しながら、1年間の需要のロードカーブを策定する。曜日の補正や最大電力値の補正をかけた後に、電源コストを割り当てて収益をシミュレーションしたうえで、見積書を作成する流れとなる(図1)。もちろん見積書の作成と同時に採算計算を行い、社内の承認処理を得てから顧客に提示することになる。

図1 電力CIS(顧客情報管理システム)の機能と業務フロー(画像をクリックすると拡大)

 電力の小売事業に新規に参入する企業では、需給管理業務を他の事業者に委託するBG(バランシンググループ)に参加するケースがある。たとえBGに入ったとしても、見積もり業務は個々の小売電気事業者が責任をもって実施しなくてはならないことを認識する必要がある。見積もり業務までアウトソースする形態も考えられるが、収益に大きな影響を与える業務であり、ベストな選択とは言いがたい。

 小売の全面自由化に伴って、高圧の需要家のあいだでも事業者を変更するスイッチングが増加傾向にある。このため見積もり業務のスピードアップは極めて重要な課題となっている。業務フローと同時にシステムを含めた仕組みをどう効率的に構築するかが事業の拡大に影響する。見積もり業務を的確に組み立てることができないと、収益が出ない赤字の事業になる可能性があるので注意が必要である。

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