低炭素社会に向けた日本のエネルギー戦略、どうする石炭火力と再エネの拡大電力供給サービス(2/3 ページ)

» 2016年12月19日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

石炭火力は2030年でも2割を超える

 政府は2030年のCO2排出量の削減目標(2013年比で26%減)を達成するために、電源別の比率を表すエネルギーミックスを2015年4月に設定した。LNG(液化天然ガス)・石炭・石油を合わせた火力発電の比率を56%まで低減して、CO2を排出しない再生可能エネルギーと原子力を44%まで高める目標だ(図4)。

図4 2030年のエネルギーミックスの内訳。LNG:液化天然ガス。出典:資源エネルギー庁

 ただし火力発電のうち大幅に減らすのは、燃料費の高い石油火力が中心になる。LNG火力と石炭火力の比率は震災前と比べてほとんど変わらない。特に石炭火力発電は燃料費が安く済むことから、電力会社をはじめ発電事業者が相次いで建設に動き出している。

 石炭火力発電の問題点はCO2排出量が多いことで、LNG火力と比べて2倍以上になる。海外の先進国では温暖化対策の一環で石炭火力発電の撤廃に向けた動きが加速しているが、日本では発電コストを引き下げる目的で石炭火力発電の新設計画が目白押しだ。

 現状のままだと石炭火力発電に伴うCO2排出量は2030年まで増え続ける(図5)。たとえエネルギーミックスの目標値を達成できても、2013年の時点と比べたCO2排出量の削減率は2割以下にとどまる見通しだ。環境省は石炭火力発電の新設に反対する姿勢を示すものの、電力業界を所管する経済産業省が容認する立場をとっている。

図5 石炭火力発電のCO2排出量の推移(画像をクリックすると拡大)。「ミックス」は2030年のエネルギーミックス。出典:環境省

 環境省が策定中の長期低炭素ビジョンの中で、石炭火力発電の抑制策をどの程度まで盛り込むかは注目だ。石炭火力に代わるLNG火力や再生可能エネルギーによる発電設備を増加させるほかに、石炭火力発電の効率を高めてCO2排出量を削減する対策も考えられる。

 経済産業省が推進する次世代の火力発電技術を採用すると、2030年には現在の最先端の発電設備と比べて石炭火力では約3割、LNG火力でも約2割のCO2排出量を削減できる(図6)。エネルギーミックスの比率が同じでも、すべての火力発電設備が次世代の技術に移行すれば、CO2排出量を2割以上削減することが可能になる。2050年までに移行を完了させるためには、新技術の実用化と設備更新を急がなくてはならない。

図6 次世代の火力発電技術によるCO2削減効果(青が石炭火力、緑がLNG火力)。USC:超々臨界圧、IGCC:石炭ガス化複合発電、IGFC:石炭ガス化燃料電池複合発電、GTCC:ガスタービン複合発電、GTFC:ガスタービン燃料電池複合発電。出典:資源エネルギー庁

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