研究対象となった一次電池は充電ができない。いわば使い切りの電池だ。これは電気自動車には適さない性質ではないだろうか。
「車載電池の容量は現在でも非常に大きい。これを一般的な電気プラグで急速充電しようとすると、電池側がどんなに頑張ってもインフラが制約になってしまう。それに対して金属空気一次電池では放電後のバッテリーパックを交換する『メカニカルチャージ式』を採用することで、急速補充が期待できるのではないかと考えている」(陶山氏)。
急速充電器は、普通充電器よりも高価だ。さらに短時間で充電しようとすると大電流を扱う機器が必要になるという主張だ。電池本体を交換式にしておけば、電池の容量が多くなっても交換に必要な時間はさほど変わらない。容量が100%残っている電池を差し込めば、そのまま「満充電」状態になる。
アルミニウム空気電池の開発を開始して直面した問題は、想定していたような性能がでないことだという。
「アルミ二ウム空気電池の負極には、2つ大きな問題があった。1つ目は自己放電、これが容量損失を引き起こす。もう1つが放電残渣(ざんさ)。残渣が表面に堆積することによって反応が阻害されてしまう」(陶山氏)。本来の容量よりも少ない電力しか引き出すことができない上に、電池の放電がうまく続かなくなるということだ。
アルミニウム空気一次電池の構造の概略を図2に示す。
負極(アノード)では金属アルミニウムが水酸化アルミニウムに変化して、電子(e−)を放出*3)。この電子をモーターが使った後、正極(カソード)で、酸素と水が吸収する形だ。
負極:Al+3OH−→Al(OH)3+3e−
正極:O2+2H2O+4e−→4OH−
全反応:4Al+3O2+6H2O→4Al(OH)3
*3) 実際にはテトラヒドロキソアルミン酸イオンAl(OH)4−が生成する。
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