企業が事業を通じて消費する電力は、地球上の消費電力のうち約半分を占める。再生可能エネルギーだけで企業活動をまかなおうとする取り組み「RE100」の意義は大きい。RE100は2017年1月17日、100%の目標に達した企業が18社に及んだと発表。日本企業の姿はあるだろうか。
再生可能エネルギーに由来する電力だけで事業を行う。このような企業が18社に達した。海外の87社が参加し、事業活動の電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す「RE100」が2017年1月17日に発表した「2017 RE100 Annual Report」の内容だ(図1)*1)。
RE100メンバー企業の活動規模は意外に大きい。2015年に87社が調達した再生可能エネルギー由来の電力量は107テラワット時(TWh、1070億kWhと等しい)。これはオランダ一国の年間消費電力量と同じだという。日本に置き換えれば、約10分の1に相当する。風力発電と太陽光発電が主な採用技術だ。
*1) スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次総会にあわせた発表。国際的な非営利団体であるThe Climate Groupは、CDP(Carbon Disclosure Project)と連携して、RE100の取り組みを進めている。RE100の設立は2014年。今回の年次報告は2回目である。RE100には米AppleやGoogle、Microsoft、General Motors、ドイツBMWなどの著名な企業も参加している。
世界の電力需要の約半分は企業活動によるもの。企業が再生可能エネルギー由来の電力を使うように変われば、影響は計り知れない。
RE100のメンバー企業が再生可能エネルギー調達を決断した理由は何だろうか。大きく4つあるのだという。(全世界の)電力コストの低減、自社の経費節減、(再生可能エネルギーの開発を促進することで実現できる)持続可能性目標の達成、企業価値の向上である。
発表資料によればRE100のメンバーである米General Motorsは、再生可能エネルギーを利用することで年間500万ドル(5.7億円)の電力コスト削減に成功しているという。
今回新たにRE100に加わったオランダRoyal Philipsの社長兼CEOであるFrans van Houten氏は発表資料の中で次のように語っている*2)。「われわれは気候変動の影響を実際に感じることができる最初の世代であり、対策を講じることができる最後の世代でもある」。これは持続可能性目標を達成する動機付けだ。達成できた企業の名声は高まる。
*2) 2017 RE100 Annual Reportの発表と同時にRE100への参加を発表した企業は、Royal Philipsの他に2社ある。英Gatwick Airportと、デンマークDanske Bank Groupである。
事業に用いる電力の100%を再生可能エネルギーから得るというRE100の目標。これを実現する道は参加企業ごとに異なる。実現目標をいつにとするかはもちろん、実現手法もさまざまだ。
報告書によれば調達方法は8つある。この中で採用企業が多いのは3つの手法だ(図2)。
3つのうち、目標実現に要する時間が短いのは「グリーン電力証書」だ。再生可能エネルギー由来の電力が備える環境負荷価値を取引可能にした証書である*3)。
もう少し直接的な手法もある。PPA(Power Purchasing Agreement)だ*4)。RE100参加企業が発電事業会社から再生可能エネルギー由来の電力を直接・間接的に購入する契約を取り結ぶ。さらに進むと、自社が太陽光発電所や風力発電所を所有・運営する形になる。米AppleやGoogleなどの取り組みはこれだ。
これら複数の手法を組み合わせることはもちろん、いったんグリーン電力証書を用いて調達比率を高めた後、他の手法の比重を増やしていく企業もある。
*3) グリーン電力証書(REC:Renewable Energy Certificates)を購入することは、電力会社から調達できる電力料金に環境負荷価値分のプレミアム料金を上乗せすることに相当する。結果的に再生可能エネルギー発電事業の成長を促していることになる。
*4) 一般に、PPAは電力会社と発電事業会社の間で取り結ぶ電力販売契約を意味する。
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