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» 2017年01月31日 09時00分 公開

エネルギー列島2016年版(40)福岡:北九州の荒波の上で洋上風力発電、自動車工場には太陽光と水素 (3/4)

[石田雅也,スマートジャパン]

CO2フリーの水素が工場や下水処理場に

図9 「宮田工場」の全景。出典:トヨタ自動車九州

 太陽光発電で作った電力からCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造する試みも始まろうとしている。福岡市と北九州市のあいだにあるトヨタ自動車九州の「宮田工場」では、CO2フリーの水素を製造して利用する計画が進んでいる(図9)。高級車の「レクサス」を生産する工場の構内に、太陽光発電設備と水素製造・供給システムを2016年度内に導入する予定だ。

 太陽光発電の電力を使って水を電気分解して水素を作り、工場内の燃料電池フォークリフトに供給する(図10)。加えてエネルギー管理システムで水素の貯蔵量と需要をもとに製造量を調整しながら、太陽光発電と組み合わせた工場内のエネルギー需給バランスの最適化を目指す。

図10 水素エネルギーの製造・利用イメージ。EMS:エネルギー管理システム。出典:豊田通商

 このプロジェクトはトヨタ自動車九州が福岡県や豊田通商などと共同で3年間にわたって実施する。太陽光発電で電力の購入量を削減するほか、燃料電池フォークリフトを活用して従来の電動式と比べて約5割のCO2を削減できる見込みだ。

 太陽光発電で作ったCO2フリーの水素を燃料電池フォークリフトに供給する試みは全国で初めてである。宮田工場で導入効果を検証しながら、今後は福岡県の内外の工場や事業所にもCO2フリー水素を活用した燃料電池フォークリフトを展開していく。

 福岡県では以前から水素エネルギーに先進的に取り組んできた。福岡市の中心部にある「中部水処理センター」では、世界初の下水バイオガスによる水素ステーションが2016年4月に商用サービスを開始している(図11)。

図11 「中部水処理センター」の下水バイオガスによる水素ステーション。出典:福岡市役所

 下水を処理する工程で発生するバイオガスから水素を作って、併設した水素ステーションで燃料電池自動車に水素を供給できる。1日に製造できる水素の量は5人乗りの燃料電池自動車で65台分に相当する。CO2フリーの水素で数多くの燃料電池自動車を走らせて大量のCO2を削減することが可能だ。

 下水を活用して水素を製造する試みはほかにもある。下水処理水と海水を組み合わせたユニークな水素製造システムを開発する計画が福岡市内で進行中だ。国土交通省が支援する「下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)」の一環で2016年10月に始まった。福岡市に本社がある正興電機製作所が中心になって、2018年度までの2年半で実用化に向けた技術調査を実施する。

 この水素製造システムでは、下水処理水と海水に含まれる塩分の濃度差で発電して水素を製造する(図12)。海水から塩を作る方法の1つに、電力を使って濃い塩水と淡水に分離する技術がある。その逆の反応を海水と下水処理水の塩分濃度差で起こして電力を発生させる仕組みだ。さらに水を電気分解して水素と酸素を作り出す。

図12 下水処理水と海水の塩分濃度差を利用した水素製造システムの導入イメージ。出典:国土交通省

 実用化できれば、下水の汚泥からバイオガスを生成する設備を導入していない処理場でも、海水と下水処理水を組み合わせて水素を製造できるようになる。下水処理場は処理した後の水を海に放流するケースが一般的で、海の近くに立地している場合が多い。海水を取り込むのにも適している。

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