北九州の荒波の上で洋上風力発電、自動車工場には太陽光と水素エネルギー列島2016年版(40)福岡(4/4 ページ)

» 2017年01月31日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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世界最大級の蓄電池が再エネを増やす

 福岡県の東部に広がる臨海工業地帯では、海外から輸入する木質バイオマスを燃料に大規模な発電プロジェクトが進んでいる。九州電力の火力発電所に隣接する用地に「豊前(ぶぜん)バイオマス発電所」を建設する計画だ(図13)。発電能力が75MWに達する国内で最大級の木質バイオマス発電所になる。

図13 「豊前バイオマス発電所」の建設予定地。出典:九電みらいエナジーほか

 燃料は立地を生かして、東南アジアからパームヤシ殻や木質ペレットを輸入する予定だ。2019年10月に運転を開始して、年間の発電量は5億kWhを見込んでいる。一般家庭の使用量に換算して14万世帯分に匹敵する。豊前市の総世帯数(1万2000世帯)の10倍以上になる。

 さらに隣接する火力発電所では、地域の発電設備を一体的に運用する「バーチャルパワープラント(仮想発電所)」を構築するプロジェクトも始まっている。火力発電所の構内に世界で最大級の蓄電システムを設置して、地域の電力需給バランスを維持する試みだ(図14)。再生可能エネルギーの導入量を拡大するために、九州電力が国の補助事業として2016年3月に運用を開始した。

図14 「豊前蓄電池変電所」の所在地(上)、大容量蓄電システムの全景(下)。NAS:ナトリウム硫黄、PCS:パワーコンディショナー。出典:九州電力

 蓄電池の出力は全体で5万kWになる。九州電力の管内では夏のピーク時に1500万kW程度まで需要と供給力が増大する。そのうちの0.3%に相当する電力の変動分を蓄電池で調整できる運用体制だ。天候によって出力が変動する太陽光発電や風力発電の設備が周辺地域に増えても安定した電力を供給していく。

 一方で南部の大牟田市の臨海工業地帯では、火力発電所が排出するCO2を分離・回収する大規模な設備を導入する計画がある。東芝グループが2005年から稼働を続けている「三川(みかわ)発電所」の構内で2020年度に運転を開始する予定だ(図15)。

図15 「三川発電所」に建設するCO2分離・回収設備の完成イメージ。出典:東芝、みずほ情報総研

 三川発電所は石炭と木質バイオマスを混焼させる方法で最大49MWの電力を供給している。発電に伴って1日に排出するCO2の50%にあたる500トン以上を分離・回収できる設備を建設する。バイオマス混焼の効果と合わせてCO2の排出量を大幅に削減する狙いだ。国内で数多く稼働している石炭火力発電所のCO2削減に向けた先行プロジェクトになる。

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2015年版(40)福岡:「水素エネルギーで日本をリード、太陽光発電も全国一の導入量」

2014年版(40)福岡:「水素タウンで先を走る、太陽光やバイオマスから水素も作る」

2013年版(40)福岡:「九州の新しい発電拠点へ、2020年までに再生可能エネルギーを3倍以上」

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