JERAにとっては2015年4月に発足してから初めての新規プロジェクトである。東京電力と中部電力が火力発電事業のコスト競争力の強化に向けて、燃料の調達から火力発電所の新設・リプレースまでを共同で推進するために折半出資でJERAを設立した(図4)。
LNG(液化天然ガス)を中心に石炭や石油を含めて火力発電用の燃料を世界各地から調達する一方、国内と海外で火力発電事業を加速させる。海外の発電事業は東京電力と中部電力が個別に手がけてきた合計600万kW(キロワット)の規模から、2030年には3倍強の2000万kWへ増強する計画だ(図5)。売上高も2000億円から1兆円へ5倍に伸ばす。
米国では中部電力が参画していた2カ所の天然ガス火力発電事業をJERAが引き継いでおり、ニューヨーク州に新設する発電所を加えて3カ所になる。このほかにも北米ではカナダとメキシコ、さらに中東や東南アジアで東京電力と中部電力が個別に推進してきた火力発電事業がある。タイでは太陽光・風力・バイオマスによる再生可能エネルギーの発電事業もJERAが引き継いだ。すでに11カ国の24カ所に発電事業を展開している(図6)。
国内では茨城県に建設中の「常陸那珂(ひたちなか)共同火力発電所1号機」が現在のところ唯一のプロジェクトである。東京電力の「常陸那珂火力発電所」の構内に石炭火力発電所を建設する計画だ(図7)。発電能力は65万kWで、2020年度に運転開始を予定している。国内でも2030年までに1200万kWの火力発電所を新設して、売上高を4000億円に拡大する。
今後は東京電力と中部電力の既存の火力発電所もJERAに統合する可能性が大きい。両社は2017年3月をめどに統合を判断する方針だ。政府が2016年12月にまとめた東京電力の改革案では、中部電力とともに火力発電事業をJERAに完全統合することを提言した。世界で最大級の燃料調達と火力発電のスケールメリットを生かして、国内外に事業を拡大して収益性を高める狙いだ。巨費を投じたニューヨーク州の新規プロジェクトも将来に向けた1つの試金石になる。
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