太陽光発電所の出力を広範囲に予測するには、日射量を推定すればよい。気象衛星の出番だ。日本気象協会はひまわり8号が備える近赤外光の観測装置を利用して、地表の積雪と上空の雲を区別する情報提供サービスを開始。北海道や東北などで威力を発揮しそうだ。
高度約3万6000キロメートル(km)に浮かぶ静止気象衛星「ひまわり8号」。日本気象協会は、ひまわり8号の優れたセンサーを利用して、地表の降雪と、上空の雲を見分けることが可能な情報提供サービスを2017年2月1日から開始した。
目的は地表の日射量を正確に見積もること。地域に点在する太陽光発電が生み出す電力の合計値をより正しく推定でき、電力の需給管理の安定化に役立つとした。
日本気象協会は、ひまわり8号の観測データを用い、推定日射量データを販売する「SOLASAT 8-Now(ソラサットエイトナウ)」サービスを、2016年5月から展開している。
同サービスは推定日射量を空間解像度500mで2.5分ごとに配信する。ひまわり8号の観測データから推定日射量をはじき出すデータ処理が必要なため、リアルタイムではないものの、観測後10分で算出できる。サービス提供時間は4時から20時だ。
従来のサービスと、今回の改善後ではどの程度結果が異なるのだろうか。「日射量データの推測誤差が10%減った」(日本気象協会)。上空の雲と地上の積雪を区別できれば、現地で実際に降雪が起きているかどうかは推定日射量データにはあまり影響を与えないという。雲があれば、日射は遮られるからだ。
新サービスの性能は実測値からも裏付けられている。1日を通じて、日射量推定値が実測値とどのぐらい違ったのか、試験データを図1に示す。
黒線が地上の日射量実測値、薄い灰色の線がこれまでの推定値、薄黄色の線が新しい推定値だ。従来の推定値よりも実測値にかなり近づいたことが読み取れる。
次に北海道全体を撮影した可視画像から、推定日射量を算出したデータ画像を見てみよう。
図2左上は可視光で撮影したもの。これだけでは雲と積雪の違いがほとんど分からない。そこで、日射量を推定するソフトウェア処理によって得た疑似カラー像(日射量を疑似カラーに置き換えたもの)を図左下に示す。これは従来のデータだ。色が赤いほど日射量が大きい。
図右下は可視光と同時に測定した近赤外光像を使って得た疑似カラー像*1)。根室や帯広の周辺では従来の疑似カラー像と色が違う。従来データでは雲だと誤判定していた空色の部分を積雪だと判別している。その結果、道東の広い範囲で日射量が多いことを推定できた。
*1) ひまわり8号のセンサー性能は大きく改善されている。ひまわり7号の備えるセンサーは可視光1バンド(チャンネル)、赤外光4バンドに対応。ひまわり8号は可視光3バンド、近赤外光3バンド、赤外光10バンドに増強されている。中心波長の範囲は0.47(青色光)〜13.3マイクロメートル(赤外光)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.