電力自由化で大躍進の東急パワーサプライ、村井社長に戦略を聞く新電力トップに聞く(2/3 ページ)

» 2017年02月14日 14時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

新サービスは「引越しそば」

SJ 2016年末に、伊藤忠都市開発が開発する学生寮「クレヴィアウィル武蔵小杉」(神奈川県川崎市)に、東急でんきを提供すると発表がありました。これは契約としては高圧供給ですが、各入居者には家庭向けの東急でんきと同じく、ポイント付与などのサービスを提供するというモデルです。このように、東急沿線で集合住宅を販売する他社との連携も強化しているのでしょうか。

村井氏 協業や提携ではなく、個別に提案を進めているかたちだ。われわれとしては、既に東急沿線に住まわれている方だけでなく、これから引っ越されてくる方も快適に過ごしていただきたい、東急グループがそのための受け皿になりたいという考えが根本にある。学生寮の例では、学生の場合どれくらい電気を使うのかは分からないが、定期券の利用率は高い。であれば、電気と併せて定期券の利用がお得になるようなサービスを提供しようと考えた。

 高圧一括受電でないマンションの場合であれば、入居者説明会に参加させてもらい、東急でんきの説明を行うこともある。とにかく、東急沿線に引っ越してきた時に最初に東急でんきを利用してもらえるように注力している。そういった思いで、東急沿線に引っ越される際に東急でんきに加入すると、引っ越しそばをプレゼントするというキャンペーンを2017年2月中旬から開始した。引っ越しそばという習慣がまだ残っているかは分からないが、東急でんきというサービスを生活の中に溶け込ませたいという思いで開始するサービスだ。今後もこうしたキャンペーンに注力していきたい。

「引っ越しそば」のキャンペーン(クリックでリンク先へ) 出典:東急パワーサプライ

※ キャンペーンの対象期間は2017年2月1日〜3月31日まで

SJ 2017年4月からは都市ガスの自由化が始まります。東急パワーサプライのガス市場への参入は。

村井氏 東急パワーサプライは、「エネルギーを通じた新しい生活体験」をスローガンに掲げている。当社のサービスメニューにガスを加えることで、生活体験を拡充したいという思いは持っており、ガスシステム改革についての情報収集およびガス事業の検討は2016年から継続している。現時点で参入時期は未定だ。

 当社ではエネルギー事業への参入にあたり、欧州のデュアルフューエルによる自由化モデルを研究してきた経緯がある。都市ガス自由化で先行する関西と中部の動向に注視しつつ、引き続き情報の収集・分析を進めたい。単独で参入する可能性は少ないが、結果的に東急沿線のユーザーにわれわれからガスを提供できるモデルを検討したい。

SJ 「FIT電気」などの環境価値をアピールする小売電気事業者も増えています。そういった新プランを展開する可能性は。

村井氏 現在は、顧客に東急でんきを安心して使ってもらえるよう、電力を合理的な価格で安定的に供給できることを第一にした電源構成をとっている。一方で、グローバルには「パリ協定」の批准など、CO2排出量の削減に向けた動きが確実に進んでいる。日本の電力業界もこうした動きに沿って行くはずで、将来はわれわれとしてもそういった流れに合わせていきたいと考えている。

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