太陽・風・水・地熱・森林に恵まれた南国に、CO2フリーの電力が広がるエネルギー列島2016年版(45)宮崎(3/4 ページ)

» 2017年03月07日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

全国トップクラスの降水量で小水力発電

 宮崎県の再生可能エネルギーは太陽光発電を中心に、風力からバイオマス発電まで導入量が着実に増えてきた(図8)。降水量も全国のトップクラスで、古くから水力発電が活発だ。太平洋に注ぐ大きな川にはダムが何カ所も造られていて、その水を利用して水力発電所が数多く稼働している。

図8 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 南部を流れる酒谷川(さかたにがわ)の上流に「日南ダム」がある(図9)。1985年に完成した治水用のダムで、水をせき止める堤体の高さは47メートルある。このダムから下流の自然環境を守るために常に水を放流している。従来は放流するだけだったが、新たに小水力発電所を建設して電力を作り出す。

図9 小水力発電所を建設した「日南ダム」の所在地。出典:宮崎県県土整備部

 宮崎県の企業局が運営する中で14番目の「酒谷発電所」だ(図10)。放流が生み出す落差19メートルの水力を使って、発電能力は520kW(キロワット)になる。2016年10月に運転を開始して、年間の発電量は233万kWhを想定している。一般家庭の650世帯分に相当する。日南市の総世帯数(2万2500世帯)の3%に過ぎないが、放流を生かしてCO2フリーの電力を増やせるメリットは小さくない。

図10 「酒谷発電所」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:宮崎県企業局

 ダムと発電所のあいだにある既設の放流管を生かしながら、水車・発電機までは新設の水圧鉄管で水を引き込む方式だ(図11)。最大で毎秒3.5立方メートルの水量を発電に利用できる。水流の落差と水量が十分にあることから、水車には汎用的な横軸フランシス式を採用した。

図11 小水力発電の設備イメージ(上)、水車・発電機(下)。出典:宮崎県企業局

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