宮崎県の再生可能エネルギーは太陽光発電を中心に、風力からバイオマス発電まで導入量が着実に増えてきた(図8)。降水量も全国のトップクラスで、古くから水力発電が活発だ。太平洋に注ぐ大きな川にはダムが何カ所も造られていて、その水を利用して水力発電所が数多く稼働している。
南部を流れる酒谷川(さかたにがわ)の上流に「日南ダム」がある(図9)。1985年に完成した治水用のダムで、水をせき止める堤体の高さは47メートルある。このダムから下流の自然環境を守るために常に水を放流している。従来は放流するだけだったが、新たに小水力発電所を建設して電力を作り出す。
宮崎県の企業局が運営する中で14番目の「酒谷発電所」だ(図10)。放流が生み出す落差19メートルの水力を使って、発電能力は520kW(キロワット)になる。2016年10月に運転を開始して、年間の発電量は233万kWhを想定している。一般家庭の650世帯分に相当する。日南市の総世帯数(2万2500世帯)の3%に過ぎないが、放流を生かしてCO2フリーの電力を増やせるメリットは小さくない。
ダムと発電所のあいだにある既設の放流管を生かしながら、水車・発電機までは新設の水圧鉄管で水を引き込む方式だ(図11)。最大で毎秒3.5立方メートルの水量を発電に利用できる。水流の落差と水量が十分にあることから、水車には汎用的な横軸フランシス式を採用した。
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