太陽・風・水・地熱・森林に恵まれた南国に、CO2フリーの電力が広がるエネルギー列島2016年版(45)宮崎(4/4 ページ)

» 2017年03月07日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
前のページへ 1|2|3|4       

地域単位に木質バイオマス発電所

 宮崎県の再生可能エネルギーは地熱やバイオマスにも広がっていく。えびの市では地熱資源の掘削調査が進んでいる。活火山の霧島山の北側にある山林の一角で、地中に試掘井(しくつせい)を掘削して地熱の温度や分布状況を調査中だ(図12)。試掘井を使って蒸気の噴出量などを確認したうえで発電量を評価する。

図12 えびの市の地熱発電プロジェクトの掘削現場(2016年10月)。出典:アストマックス

 再生可能エネルギー事業に取り組むアストマックスグループが2017年3月まで調査を実施して、発電事業の可能性を判断する方針だ。えびの市は宮崎県内で高温の地熱資源が存在する唯一の地域で、地熱発電所を建設できるポテンシャルは大きい(図13)。

図13 宮崎県の地熱発電ポテンシャル。53〜120℃の分布(左)と120〜150℃の分布(右)。えびの市は地図の左側にある色が付いた地域。出典:宮崎県環境森林部(環境省のデータをもとに作成)

 宮崎県は面積の76%を森林が占める九州一の森林県でもある。県内の地域区分ごとに木質バイオマス発電所を建設した。県北では日向市、県央では川南町、県南では日南市で稼働中だ(図14)。

図14 宮崎県の市町村と地域区分。出典:宮崎県

 新たに最南端の串間市でも木質バイオマス発電所の建設計画が始まった。すでに県内で稼働している木質バイオマス発電所は発電能力が5MW以上で大きいが、串間市で計画中の発電事業では2MW以下と小規模だ。その代わりに木質バイオマスからガスを作って、発電と同時に熱も供給するコージェネレーション(熱電併給)システムになる。

 木質チップを燃焼させた熱で発電する通常の方式と比べて、ガスを作ってから発電するほうが効率は高くなる。さらに排熱は燃料になる木材の乾燥に利用できる。串間市のプロジェクトは新電力の洸陽電機が地元の企業と共同で推進する体制だ(図15)。

図15 串間市の木質バイオマス発電事業のスキーム。SPC:特別目的会社、EPC:設計・調達・建設。出典:洸陽電機

 運転開始は2017年の夏を予定している。年間の発電量は150万kWhを見込み、一般家庭で420世帯分の電力になる。串間市の総世帯数の5%に相当する。総事業費は27億円で、新規の雇用を含めて地域にもたらす経済効果は大きい。

*この記事の電子ブックレットをダウンロードへ

2015年版(45)宮崎:「九州一の森林県にバイオマス発電所が続々誕生、太陽光で水素も作る」

2014年版(45)宮崎:「南国の特産品でバイオマス発電、サツマイモから鶏糞まで燃料に」

2013年版(45)宮崎:「降水量が日本一の県で水力を再生、古い発電所とダムの増改築に着手」

前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.