太陽電池セルを製造する際、一般的な手法では材料の50%が無駄になる。これを避ける製造法を米1366 Technologiesが開発した。高温で溶けたシリコン融液から直接ウエハーを作り出す。2017年3月には変換効率が20%まであと0.1ポイントに接近。出力500kWの太陽光発電所への採用も決まった。
太陽電池モジュールのコストの40%は内蔵する電池セルが占める。その電池セルの製造コストを半減できると主張する企業がある。米1366 Technologiesだ。
同社の「Direct Wafer技術」は溶けたシリコン(ケイ素)から、切削工程を用いずに直接、多結晶シリコン太陽電池セル用のウエハーを製造するというもの(図1)。
他社とは全く異なる製造手法であり、製造コスト以外の利点もあるという。現在は、基礎研究の段階を経て、量産へと向かいつつある段階だ。同社は2017年3月8日、導入事例と性能向上について相次いで成果を発表した。
導入事例第1号は日本企業向け。IHIの100%子会社であるIHIプラント建設が、兵庫県に出力500キロワット(kW)の太陽光発電所の建設を開始。2017年第2四半期の完成を予定する。
1366 Technologiesが約12万枚のDirect Wafer太陽電池セルを製造し、中国のティア1企業が太陽電池モジュールを組み立てた。2017年3月3日、IHIプラント建設がこの太陽電池モジュールの納入を受けた。
1366 Technologiesによれば、これまでも多数のテストサイトでDirect Wafer太陽電池セルとモジュールの性能を検証しており、今回は初の大規模な事例なのだという。
性能の向上も著しい。3月8日には太陽電池セルの変換効率が19.9%に達したと発表した*1)。1366 Technologiesによれば、2016年12月に変換効率が19.6%に達した段階で他の多結晶シリコン太陽電池を上回ったと主張。今回は抜き去った形だ。
同社のCTOであるAdam Lorenz氏によれば、変換効率について、同社の改善速度は高く、年間1ポイントに達するという(2013年に変換効率16%を突破)。
19.9%に達したセルではDirect Wafer技術を用いてセル用ウエハーを製造(図2)。同社が提携する韓国Hanwha Q CELLSのQ.ANTUM技術を利用して、光利用効率を高めた。Q.ANTUM技術は、一般にPERC型と呼ばれている太陽電池セルに用いられている技術の一種だ(囲み記事参照)。
*1) ドイツのフラウンホーファー研究所(Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems)の一部門であるCalLabが測定した。
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