溶けた原料から直接作る太陽電池、効率19.9%蓄電・発電機器(1/3 ページ)

太陽電池セルを製造する際、一般的な手法では材料の50%が無駄になる。これを避ける製造法を米1366 Technologiesが開発した。高温で溶けたシリコン融液から直接ウエハーを作り出す。2017年3月には変換効率が20%まであと0.1ポイントに接近。出力500kWの太陽光発電所への採用も決まった。

» 2017年03月21日 14時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 太陽電池モジュールのコストの40%は内蔵する電池セルが占める。その電池セルの製造コストを半減できると主張する企業がある。米1366 Technologiesだ。

 同社の「Direct Wafer技術」は溶けたシリコン(ケイ素)から、切削工程を用いずに直接、多結晶シリコン太陽電池セル用のウエハーを製造するというもの(図1)。

 他社とは全く異なる製造手法であり、製造コスト以外の利点もあるという。現在は、基礎研究の段階を経て、量産へと向かいつつある段階だ。同社は2017年3月8日、導入事例と性能向上について相次いで成果を発表した。

図1 太陽電池セルの製造ライン 出典:1366 Technologies

量産から太陽光発電所へ

 導入事例第1号は日本企業向け。IHIの100%子会社であるIHIプラント建設が、兵庫県に出力500キロワット(kW)の太陽光発電所の建設を開始。2017年第2四半期の完成を予定する。

 1366 Technologiesが約12万枚のDirect Wafer太陽電池セルを製造し、中国のティア1企業が太陽電池モジュールを組み立てた。2017年3月3日、IHIプラント建設がこの太陽電池モジュールの納入を受けた。

 1366 Technologiesによれば、これまでも多数のテストサイトでDirect Wafer太陽電池セルとモジュールの性能を検証しており、今回は初の大規模な事例なのだという。

変換効率が20%を超えるか

 性能の向上も著しい。3月8日には太陽電池セルの変換効率が19.9%に達したと発表した*1)。1366 Technologiesによれば、2016年12月に変換効率が19.6%に達した段階で他の多結晶シリコン太陽電池を上回ったと主張。今回は抜き去った形だ。

 同社のCTOであるAdam Lorenz氏によれば、変換効率について、同社の改善速度は高く、年間1ポイントに達するという(2013年に変換効率16%を突破)。

 19.9%に達したセルではDirect Wafer技術を用いてセル用ウエハーを製造(図2)。同社が提携する韓国Hanwha Q CELLSのQ.ANTUM技術を利用して、光利用効率を高めた。Q.ANTUM技術は、一般にPERC型と呼ばれている太陽電池セルに用いられている技術の一種だ(囲み記事参照)。

*1) ドイツのフラウンホーファー研究所(Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems)の一部門であるCalLabが測定した。

図2 Direct Wafer技術を利用して製造した太陽電池セル 寸法は一般的な太陽電池セルと同じ156ミリメートル角 出典:1366 Technologies
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.