屋根の上に設置する太陽光パネルの施工やメンテナンスを行うとき、やむを得ず作業員がパネルの表面に乗って作業を行うケースがあります。果たしてパネルへの影響はないのでしょか? 今回はモジュールの強度と設置方法の問題について考えます(この記事は「O&M Japan」からの転載記事です)。
この記事は太陽光発電のO&Mに関する総合情報発信サイト「O&M Japan」に掲載された【太陽光発電O&Mノウハウ】作業中、パネルに乗るのはありなのか?を、スマートジャパン編集部で一部編集し、転載したものです(アイティメディアの表記ルールに基づいて原本から表記を一部変更しています)。
家屋の屋根へのモジュール設置作業時や、設置されたモジュール(ソーラーパネル)のメンテナンス作業を行う時、やむを得ず作業員がパネルの上に足を掛けたり乗ったりしなければならない場合があります。モジュールの面積が広い場合や、周囲に足を掛ける場所がない時は、多少なりともパネルの上に乗らざるを得ないのです。
ですが、太陽光設備の施工業者やO&M業者は、どうしてもやむを得ない理由がない限り、基本的にパネルの上に乗ったり歩いたりしてはいけません。なぜなら、ソーラーパネルを製造するメーカーの多くは、パネルの上に大きな重量がかかることを想定しておらず、そこまでの強度を求めて設計・製造していないからです。
したがって、乗る人の体重や製品の強度にもよりますが、多くの場合パネルの上に人が乗るとセルにマイクロクラックが入ってしまったり、最悪の場合はコネクタラインとのハンダ部がはずれてしまったりということがあるかも知れません。これは実験によっても明らかとなっていますし、実際に多少のトラブルの発生も報告されています。
実際にソーラーパネルの上に人が乗ると、メーカーや製品の種類によって異なりますが、たいていミシミシという音が発生します。その場でセルが割れることがなかったとしても、特別な検査機器を使って調べてみると、目に見えないマイクロクラックが発生していたり、パネル内部が破損していたりすることがあります。
ですから、たとえ重要な点検、メンテナンスと言えども、「出来る限りパネルの上に人が乗るべきではない」のです。これはO&Mの作業における大原則と考えてよいでしょう。
ソーラーパネルの強度はメーカーや製品によって異なります。ガラスの厚みやフレームの強度がメーカーごとに違うのです。
ソーラーパネルには様々な種類がありますが、大きく「シリコン系」「化合物系」「有機物系」の3種類に分けられます。現在、住宅用ソーラーパネルに多く使われているのは、シリコン系の「結晶シリコンソーラーパネル」と「薄膜シリコンソーラーパネル」ですが、この「結晶系」と「薄膜系」は構造が違うだけでなく強度にも差があるので、パネル選びの際には気をつけましょう。
薄膜系のパネルは材質上もともと湿気など水分に弱いため、パネル内部に湿気が入りにくいように二重ガラスにして強化フレームを用いています。したがって結晶系に比べると強く、パネルの上に人が乗ってもある程度は大丈夫な作りになっています。もちろん人が乗る為に丈夫にしている訳ではないのですが……。
一方で「結晶系」のパネルは「薄膜系」に比べると強度において弱く、人が乗ると破損する可能性が高いです。これらは薄膜系パネルのような強度を必要せず、軽量化に視点をおいているからです。もちろん結晶系パネルでも製品によってガラスやフレームの厚みなどが違います。
また、パネルのなかには、パネルの真ん中を手で押しただけで簡単にたわんでしまう位弱いものもあります。こうしたパネルは、徹底的に軽量化を図り屋根に負担を与えないようにするために、メーカーが技術開発の中でガラスもセルもバックシートも極限まで薄くしているのです。こうしたパネルの場合、当然ながらまず人が乗ることさえできません。乗った瞬間に簡単にへこんでしまうのです。
このようにメーカーや製品によってパネルの強度は様々です。パネルを選ぶ時にはその強度にも注意して選び、設置する時は、パネルの上に乗らなくてもメンテナンス作業が可能な状態になっているかどうか、という点まで確認しておくことが重要といえます。
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