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» 2017年04月20日 09時00分 公開

有機単層結晶薄膜の電荷分離の様子を明らかに、太陽電池の高効率化に応用へ太陽光(2/2 ページ)

[庄司智昭,スマートジャパン]
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電子物性評価に成功

 同研究グループは、アントラセン単層結晶薄膜についてフェムト秒時間の精度で光電子分光を行い、光で励起された電子状態が変化する様子を追跡した。平たんな分子薄膜の表面上に2つの特徴的な電子状態(図2(ア))が観測できたという。

 1つ目は光で鏡像準位に励起された電子は、表面上を自由電子に近い状態で1.1ピコ秒の寿命で滞在していること。2つ目はアントラセン分子内の電子を励起する光を用いると、この励起子が2.5ピコ秒の間、単層結晶内に閉じ込められることである。

図2:左=アントラセン励起子を生成しながら測定したフェムト秒時間分解光電子スペクトル/右=初めて観測に成功した光励起子過程の模式図 (クリックで拡大) 出典:慶應義塾大学

 鏡像準位の電子が単層結晶内の励起子と相互採用して表面から飛び出す、という新しい現象を見いだすことにも成功したとする。この現象は、単層結晶中に閉じ込められた励起子が消滅する際に失うエネルギーを、表面上の鏡像準位に滞在している電子が受け取り、その結果電子が表面から飛び出すものである(図2(イ))。

 表面上に広がった電子状態は一般的に、分子に局在している励起子とは強く相互作用しない。しかし分子が整列して単層結晶が形成されると、励起子が単層内を広く動き回れるようになり、エネルギーの授受が可能となるものだ。

 同研究グループは「この研究成果は、有機光電変換デバイスにおける電荷分離の過程において、電荷が拡散できる範囲を広げることが有効で、そのためには有機分子を整列させた結晶化が効果的であることを初めて実験的に示したものである。有機光電変換デバイスを高効率化するための基盤技術として利用価値が高いと考えられる」とした。

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